過去拍手文

□The restaurant have many order
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森へブンちゃんと狩りに出掛けた。
生まれて初めて鉄砲なんて持ってマジマジ感動してたんだけど、鹿も猪も全然出て来ないC、日も暮れてだんだん辺りが暗くなって来た。
連れてた犬たちも何でか突然泡吐いて死んじゃったよ、ちょーコエー!!
「うわ」
急に強い風が吹いて俺の髪はめちゃくちゃ。
お腹すいた、眠い、案内の人どこ行っちゃったんだよ、もー!
「ジロー、あれ」
降りて来る瞼を必死に開けながら、ブンちゃんの指差す方を確認すれば洋風の家が建ってた。
「山猫軒」
「西洋料理店だってよ」
「レストランってこと?」
「だろうな。入るぞ」
「A、俺いくら持ってたかなぁ」

どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません。

「意味わかんないんだけど」
「安めって意味かもな」
とりあえずドアを開けたんだけどテーブルも椅子も見当たらない、廊下が奥まで続いてる。

ことに肥ったお方や若いお方は、大歓迎いたします。

「やったね、ブンちゃん!」
って言ったら脇腹を小突かれた。痛ェ。
それにしても何でわざわざガラスの扉に書くんかなー、金文字って趣味悪くない?跡部みたい。
キョロキョロしながら廊下歩いてたら、今度は水色のペンキで塗られたドアがあった。
「席着くまでにドア多くない?」
「山ん中だから防寒対策だろぃ」
「そーかなー」

当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください。

黄色で書かれると目がチカチカするよ。
注文が多い?メニューのこと?日本語だと良いけど。俺あんま難しい料理名とかわかんねぇ。
なんて思いながら扉を閉めたら

注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。

「しつこー」
「混んでんじゃねぇ?」
「座れたらEけど」
って言ってるうちにまた扉…とその横に鏡とブラシ。

お客さまがた、ここで髪をきちんとして、それからはきものの泥を落としてください。

赤い字って血みたいでちょっとコエェ。
でも確かにさっきの風で頭ボサボサだもんね。ブラシは助かる。
俺がブラシを取ろうとしたら、ブンちゃんが先に掴んで俺の髪を梳かしてくれた。
天パだからかなり絡まってんのに、丁寧に梳かしてくれて全然痛くない。
ブンちゃんが俺の髪を構う時はいつもそうだ。俺ブンちゃんに頭撫でて貰ったり、髪を指で梳かれたりすんの好き。
俺の頭ももとに戻って、今度は俺がブンちゃんの髪を梳かしてあげる。
扉の赤い字よりずっと鮮烈で綺麗な赤は、ちょっとクセはあるけどほとんどストレートだから素直に櫛が通っていく。
羨まCなぁ。
「はい、おしまい」
「おう、サンキュー」
靴の泥を落として、ブラシを元の場所に戻した途端、霧みたいに全部が消えた。
「マジマジすげー今の見た?」
「おう。ってかありえねぇ!」
二人で興奮してたらまた風が吹いた。室内なのに!
「防寒対策全然ダメじゃん!髪梳かした意味ねぇC!!」
「落ち着けジロー」
ほら、って今度は手櫛でブンちゃんが直してくれた。
こっちの方が嬉Cかも。
ブンちゃんの方はそれほど乱れてなくて、自分でササッと直しちゃった。残念。


扉を開けたら今度は

鉄砲と弾丸をここへ置いてください。

扉の横に台があった。確かに鉄砲は邪魔だよね。
いちいち不思議がるのもめんどーになって、とにかく言われた通りにすることにした。早く座って、寝るなり食べるなりしたい。
黒い扉の前には

どうか帽子と外套と靴をおとり下さい。

ちょっと寒くなるけどしょうがない。その分、ブンちゃんにくっついて歩いた。
扉の内側には

ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、ことに尖ったものは、みんなここに置いて下さい。

黒塗りの金庫なんて初めて見たよ。やっぱCお金持ちのやることは違うね!
財布まで預けるってことは、お会計はこの部屋なんかな。
それよりもシャツのボタンが一個もなくて、前が全開なんだけど。ちょーさみー。

壷の中のクリームを顔や手足にしっかり塗ってください。

ガラスの壷ん中に入ってんの、これって生クリームじゃん。
ほんとワケわかんねぇけど、いちおー指示通りに塗る。
最初は顔。そんで手。
「これって服も脱いで塗るんかな?」
「多分な。背中塗ってやるよ」
「ありがとー」
シャツ脱いでブンちゃんに背中向けてたら、クリーム持ったブンちゃんの手がヒヤッと触れて。
「んあ」
「何?感じちゃった?」
「ちがっ!!」
違わないんだけど、ああもう、恥ずかC!!
「も、もうEよブンちゃん」
「まだ終わってないぜぃ?」
「ん、ふ」
ブンちゃんの手付きは丁寧で、クリームを延ばされる度に声が洩れてしまう。
これじゃあ誘ってるみてぇじゃん。
「ジロー」
「な、何?」
「俺もう腹減って限界?」
「お、れもだよ」
「だからー」
「だから?」
「いただきます」
「ひあ!」
突然ブンちゃんの腕が前に回って来て、肩口に吸い付かれる。
もう声なんて気にしてられなくて俺もブンちゃんも、ついでに頭ん中もクリームでどろどろ・・・。


「…夢か」
みょーにリアルな夢だったな。思い出すだけでも恥ずかC!!
そこに無機質なケータイの音。
うわぁ、今一番会話したくない人だ…出ないワケにはいかないけど。
「もしもC」
「よー、起きてたか?」
「今起きたよ。さっきまで借りた本の夢見てた」
「へー、どんなんだよ?」
「ブンちゃんの恥知らず」
「はあ?」


E.

きっと読んでる途中で寝ちゃった系。

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