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□お揃い
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今日の慈郎はやたらと上機嫌だ。一緒に買い物に出掛け、行く先々で目を輝かせ気に入った物を何故か色違いで二つ買っていた。
「小遣いなくなんじゃねーの?」
と一応心配の声を掛けてみたが
「Eから!」
と本人が言うので、それ以上はブン太も止めなかった。
もともとそんなに金遣いが荒いわけではないし、たまには良いか、ぐらいに思っていた。
が。


ブン太の家に戻り、部屋に入るなり慈郎は買ったものを開封し始めた。
「おいおい、自分家に帰るまで我慢しろぃ」
「今じゃないと、意味ねぇもん」
そう言うなり自分の目の前に差し出された真っ赤なTシャツ。
「は?」
「あげる」
「何でまた」
「学校行く時のカッターの下にTシャツ着たりするでしょ?これで学校違ってもお揃いだね!ちなみに俺のはオレンジなんだ〜」
「おいまさか…」
その後も次々と慈郎の手によって開封されるプレゼントの数々。
スポーツタオル、シャーペン、ノート・・・までは良い。
「ちょっと待て。それは絶対ぇ付けねぇぞ!」
「A!結構便利だよ?」
ほら。とサイドの髪を赤いヘアピンで留めた慈郎は大変可愛らしいのだが。
「俺はそんなもん使わねえ!似合わねえし!!」
「そんなことないよー」
必死に抵抗を試みるも、手首の柔らかさを活かしてあっさりヘアピンはブン太の耳の上に。
「ブンちゃんだって可愛Eよ!」
無理やり渡された鏡を覗けば、なるほど、自分の赤い髪に黄色のヘアピンは良い組み合わせかもしれない。
「けどやっぱ違ぇだろぃ」
「そぉかなー?」
なおも食い下がる慈郎にげんなりしつつ
「ってか、そんなにお揃いお揃いって何かあったのか?」
「……お揃いがあったら、寂しい回数減るかなって」
うな垂れて可愛らしいことを呟く慈郎の肩をトントンと叩き
「なら俺からも一個お揃いをプレゼント」
「ほんと!」
パアアッと微笑んだ慈郎の首元に素早く口付ける。深く吸い付いて唇を離せば残る花びらのような痕。
「ブンちゃん!」
「ほら、お前も」
顔を真っ赤にして睨んで来る慈郎に、ブン太は余裕の笑みを返す。
「付けねぇとお揃いになんねぇじゃん」
「こんなのお揃いじゃない!」
「ふーん?」
グイッと慈郎の頭を抱え込み、耳元でそっと
「いつかペアリング買ってやるから」
と囁くと、嬉しさと恥ずかしさが入り混じった顔をして
「絶対だかんね!」
怒ったような口調で叫ぶと、可愛い唇がブン太の首元に落ちて来た。


E.

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