short

□彼氏の上手な誘い方
1ページ/1ページ

「ねーブンちゃーん」
「んー?」
「ブンちゃんは、どーゆー時にエッチしたくなるの?」
「は!?」
「ねー、どーゆー時?」
「何お前シたいの?」
「そーゆーワケじゃないんだけど、ちょっと知りたくて」
「ふうん」
突拍子もない話題だが、どうやら慈郎はいたって真面目なようで、ブン太の中にムクムクとイタズラ心が膨らむ。
「そんなに知りたきゃ当ててみろぃ」
「え」
「自分で考えて、俺をその気にさせてみろよ」
「!!」
「なーに?知りたいんじゃなかったの?」
「う……」
顔を真っ赤に染めて視線を落とし、しばらく目を泳がせていたが、やがて腹を決めたのか小さく頷き
「やる!!」
と真っ直ぐこちらに向き直った。
そのままおずおずと首に手を回し、ゆっくりと顔が近づいて来る。後数センチで唇が触れそうという所で、ブン太はガムを膨らませた。
「!!」
目を剥く慈郎を笑いながら、出来た風船をパチンと割った。
「ブンちゃん、イジワルだ〜」
「キスだけでご褒美貰おうなんて甘いんじゃないの?もっとこう、雰囲気作りから始めねえと」
「む〜」
腕を組んで考え込んだ後、今度は慈郎の手がブン太のシャツに伸びて来た。意図を察して、ブン太は服の下に忍び込もうとする手を押さえる。
「俺脱がすのは好きだけど、脱がされるのは好きじゃないから」
「じゃ、じゃあどうすれば良いの!?」
「自分で考えろぃ」
なおも意地悪く言ってやると、泣きそうに瞳が潤む。それでも他に方法を思い付かないのか、慈郎は自分の服を脱ぎ始めた。
ゆっくり、ゆっくり、焦らすように。
それを無関心を装って、ブン太は無表情で眺める。
視線だけで感じてしまうのか、慈郎の身体は心無しか震えている。
自分から誘っているクセに、まるで襲われているかのようだ…。
ついに残すは下着のみとなった時、下着の上から自分の性器に触れ
「お、俺のここ、もうこんなになってんだけど…」
その行為と言葉のあまりの似合わなさに、思わずブン太はふき出した。
「わ、笑うなんてヒドE〜」
もはや慈郎は涙目だ。
「悪ぃ悪ぃ。そー怒るなって」
今度は自分から慈郎を手招きして、膝の上に乗せてやる。頭をあやすように撫でながら
「何でそこまで俺を誘いたいワケ?」
「あのね・・・」


その日はたまたま慈郎と岳人が最後まで部室に残っていた。
今思えば、緩慢な動きで着替える慈郎を岳人が待っていたのかもしれない。
ジャージの上を脱いでカッターシャツに袖を通していると、ふいに岳人が
「なー、お前丸井ともうヤった?」
「やるって何を?」
「ヤるって言ったら一つだろ!そんなこともわからないお子ちゃまなら、まだヤってねーんだな?」
シャツのボタンを止めるのも忘れ、慈郎は逡巡する。
俺とブンちゃんとやることと言えば・・・
「チューのこと?」
「全然ちげーよ!!キスぐらい俺だって侑士としてるし!!」
「ならエッチのこと?」
「あーあーセックスって言えよ、これだからお子ちゃまは…」
「何回かしたことあるけど」
「だろーなー…ってはっ!?」
「ブンちゃんとエッチでしょー?したことあるよー」
「マジかよ……」
今度は落胆して溜め息を吐き始めた岳人に、へんなの、と言いながら慈郎は着替えを再開する。
「はー…お前はまだだと思ったのに」
「何でさ?」
「だって俺たちちっちゃい系じゃん?」
「そーなの?」
「侑士のヤツ、未だにキス以上のことはしようとしねぇんだよなー」
「へえ、いがE」
「俺の見た目が子供っぽいからかと思ったんだけど…」
「中身も子供っぽいじゃん」
「お前にだけは言われくねえよ!!…でもアレだな、お前らんとこ二人ともちっちゃい系なのに、そういうことヤってんだな」
ちっちゃい系って何?と首を傾げる慈郎に構わず、岳人は愚痴り続ける。
「はー、俺ってそんなに魅力ねぇのかなー…」
このままでは帰宅出来そうにないと感じた慈郎は岳人の肩をガッシと掴み
「なら、俺がブンちゃんに聞いてあげるよ!」
「聞くって何をだよ?」
「どーやったらエッチしたくなるのか」


話を聞き終えて、ブン太は口元を引きつらせる。
「つまりそれは、向日、いや忍足の為に今まで俺を誘っていた、と…?」
「うーん、そーなるのかな?」
突然ブン太は慈郎を押し倒す。
「わわっ!何なにどうしたの!!」
「許さねえ」
「え?」
腹から響く重低音で囁きながら、掌で慈郎の性器を撫でる。
「お前の誘いに乗ってやるよ」
「何で急に?」
「自分で考えろぃ!!」


結論、ブンちゃんは嫉妬すると襲って来る。やたらキスマーク付けたがるC。
「今日のことは、向日には教えんなよ」
「何で?」
「せっかく慈郎が“俺の”為にいろいろやってくれたのに、他人に教えるなんて勿体ねぇだろぃ」
「うあ、あー、ブンちゃんこそ忘れてよ〜」
「それこそ勿体ねぇよ」
やっぱりブンちゃんはちょっとイジワルだ。


E.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ