short

□little by little
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彼女が出来たら行きたかったデートスポットは漫画喫茶。
今俺の隣にいるのは彼女じゃなくて彼氏だけど、恋人には違いない。
だからこれは理想のデート!!
・・・のはずだったんだけど。


よく考えたら漫画喫茶って完全に個人の世界じゃん。雑誌ならともかく単行本って明らかに一人で読むもん。
あーだから俺雑誌の方が好きなんだ、こうみんなでワイワイ言いながら一緒に読むのが楽Cから。
漫画の世界に没頭しちゃえば全然問題ないんだけど、誰かと一緒にいるのに一人で何かやるのって寂Cじゃん。
寂しくなると俺、眠くなっちゃうんだよね…。
積み上げた漫画を横目に、丸井君の方を確認すれば映画のDVDを熱心に見てる。
同じ空間にいるのに入り込む世界が違うなんて…。
たまらなく寂しくなって、俺は丸井君に縋り付いてた。
邪魔しちゃ悪いとは思うんだけど、俺の寂しい気持ちは追いついて来ない。
恐々丸井君の顔を確認すると、相変わらず視線はテレビに向かったまんま。だけどにゅっと右手が伸びて来て、俺の頭を優しく撫でてくれた。
安心してまた顔を丸井君の胸に押し付ける。
しばらくそうしてたら、トントンと肩を叩かれた。
顔を上げると、ヘッドホンを付けられた。
そっか、これで同じ世界に浸れるね。
このスパロウって海賊、お調子者ってかフザけたとこあるけどかっこE。丸井君みた、い・・・。


最悪だぁ。無理言って学校帰りにデートして貰ったのに。俺に合わせて漫画喫茶にしたのに。
もうダメだ、絶対嫌われた!!
さっきから一言も口利いてないC。
何で俺は何見ても眠くなるんだ、なんて神様を恨んでもしょうがなくて。
「ま、丸井君」
「何?」
勇気を振り絞って声を掛けたものの、返って来た返事が心無しかいつもより冷たい気がして泣きたくなる。
でもダメだ、ちゃんと言うこと言わないと。
「今日は俺のワガママに付き合ってくれてありがと」
「……」
ああ、きっと呆れてるんだ。
「その、ごめんね…つまんなかったでしょ?」
「それってお前は今日つまんなかったてこと?」
ううう。そーじゃない、そーじゃないのに〜。
「お、俺は楽しかったよ!映画見てる間も丸井君が構ってくれたから!でもせっかく一緒に映画見てたのに俺途中で寝ちゃったC、それで、あの、そのっ丸井君がつまんなかったんじゃないかなって…」
もしこれでフラレたら、俺冬眠する。丸井君に嫌われる以上に寂Cことってないよ!
「まあまあ楽しかったけど」
「だよねぇ、ごめん…え?」
「芥川の可愛ーい寝顔も見られたし?」
「!!」
「お前気持ち良さそーに寝てんのなー」
う、わ、恥ずかC!!
「けどまあ、今度は二人一緒に遊べる所にしようぜ。漫画喫茶ってぶっちゃけデートって感じじゃねぇだろぃ」
「う、うん、そうだね」
「だから次は俺の行きたいデートスポットに付き合え」
「うん!!」
「あ、駅着いた。じゃー俺あっちだから。気ぃ付けて帰れよ!」
「バイバーイ」
前言撤回。丸井君はスパロウ船長よりずーっと、ずぅーっとかっこE!!
次のデートがあることが信じられないくらい嬉しくて、丸井君が見えなくなっても俺はしばらくそこに立ってた。
うっかり電車に乗り遅れちゃったけど、今は親に怒られんのも怖くない。


E.

付き合い始めて間もないデート

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