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□ブカブカ
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憂鬱な時期を乗り越えて、無事付属の高校に入学。そしたらまた前みたいに逢えるだろう…なんて考えは甘かった。
高校生って中学よりも忙しい。中学の時も大概窮屈だったけど、高校は輪を掛けて自由な時間が減った。大学行って、就職して、自分で飯を食えるようになったら、自由な時間は得られるんだろうか?それとも成長するにつれて、このまま時間は減る一方?大人になるとは不自由になることだ、なんて…冗談じゃねえ!!


ジローに逢うのは三ヶ月ぶりだ。桜はとっくに散って葉っぱの緑が実に瑞々しい。
もともと学校が違うから、そんなに頻繁ではなかったけど、それでも最低一ヶ月に一回は会っていたことを思えば今の状態は信じられない。よく禁断症状出なかったよな、俺…そんだけ俺も忙しかったってことだけど。
久々に会うジローの顔は最後に見た時よりちょっと大人びていて、もしかしたら背も伸びたかも。中学と少し違うデザインの制服もすっかり馴染んでいた。
それでもやっぱりジローはジローだ。会うなり人目も気にせず抱きついて来るところや、「もう高校生だし?」って冗談混じりに誘った初めての恋人用ホテルにはしゃいでるとこが。
「スゲースゲー!俺ラブホテルなんて初めて入ったー!!」
それは俺も同じなんだけど。
「ジロー」
人差し指を自分の口の前に持って来てしぃーって言った途端、急にドギマギしだす。相変わらずこういう空気は苦手。それでこそ俺のジロー。
チョイチョイと手招きすりゃ、テテテっと寄って来る。良い子だ。
俺は服を脱がすのも、自分で脱いでるのを見るのも好き。
せっかく久しぶりに会ったんだから、一つ一つジローの細部を確認するのも良いかもしれない。
髪を撫でてやりながら、期待と羞恥の入り混じった瞳を向けてくるジローに一言
「脱いで」
だけど今日はじっくりとジローを眺めてたい。何となくそんな気分。


自分は下着を残してサッサと制服を脱ぎ捨て、ベッドに潜ってジローがゆっくりと脱ぐのを観察。俺の指示する通りに脱いでいくジローは、やっぱり前より少し色っぽい。
靴下を片方ずつ、ベルト、スラックス…。
「お、ボクサーパンツ穿いてんじゃん」
「トランクスは卒業したんだ」
「成長したな」
「バカにしてるでしょー?」
「してねぇよ」
折りしも色は黒。今日の俺も黒のボクサー。
「ヤッた後に交換して帰る?」
「そんなことしたら!!」
「また勃っちゃう?」
「知んないよ、もう!!」
「冗談だって」
真っ赤になってそっぽ向いて、可愛いヤツ。そんなんだからつい、からかいたくなっちまう。
「あ、シャツはまだ良い」
「え?」
「先にパンツ脱いで」
「……っ!!」
成長を見越してかジローのシャツはややデカい。下着まですっぽりだ。彼氏のシャツ来た起き抜けの彼女みてぇ。堪らなくそそる。
自棄みたいに下着を脱ぎ捨てたジローに笑いながら手招き。不服そうにしながらも来るとこが可愛い。
「ブンちゃん!!」
寄って来たジローのシャツの裾をビラっと捲ったら殴られた。
「痛ってぇな、何すんだよ」
「ブンちゃんが変なことするからじゃん!!」
「お前も小学生くらいの時、女の子のスカート捲っただろぃ?」
「やんないよ!岳人がやっててちょー嫌われてたもん」
「ふーん」
「ブンちゃんはそんなことして嫌われなかったの?」
「嫌われた」
「ザマーミロ」
「お前も?」
「は?」
「お前も今ので俺を嫌いになった?」
「そ、それは……」
勢いで嫌い!って言ってしまいところだけど、ケンカ別れになったらどうしよう!!って顔。
考えてることがすぐ顔に出んのも中学の時と一緒。
別に心配することねーのに。俺だって冗談言ってんだから、ジローが可愛い嘘吐いたところで怒ったりしない。
…ちょっとからかい過ぎたか。当分口利いて貰えなくなるかも。
グイっとジローの腰を抱き寄せて、シャツ越しに頭を腹に押し付ける。若干筋肉増えたな。
「今日のお前、綺麗だな」
「きゅ、急に何?」
「別にぃ?そう思ったから言っただけ」
「またからかってる?」
「いやマジだって」
なおもギュッと抱きしめると、おずおずと俺の首に腕が回される。
「長かったー」
「うん」
「会わない間にお前結構成長してるからさ」
「それはお互い様でしょ」
「そうだけど、やっぱ悔しいじゃん」
「……」
「からかってごめん」
「……Eよ」
許しの言葉に笑って、キスして、もう一回抱きつく。時間が気になるけど、今はもうちょいこのまんまで。
次に逢えんのは何ヶ月後だろう?
ジローはますます色っぽくなっちまうんだろうか?
それは願ったり叶ったりだけど、シャツの寸法にはまだ合わなくて良い。


E.

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