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□夏の終わり、はじまりの日
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夏の大会が終わって三年生は引退。いよいよ本格的に跡部がテニス部を仕切るようになった。
今日はようやく跡部以外の俺たち一年初の晴れ舞台!!…なんだけど。
「全然手応えねぇCー、眠いー」
一回戦も二回戦も、あっさり勝っちゃってちょーヒマ。
もっと俺の目がパッチリ覚めるような強ぇ相手いねぇかなー。跡部の時みてぇなワクワク試合してぇ!!
それにしても眠い…次の試合まで時間あるC、Eや、寝ちゃA。きっと宍戸あたりが起こしに来てくれるっしょ。


ガツッ。
「痛ぇ!!」
向こう脛に痛みを感じて思わず起き上がると、違う学校の生徒が奇妙な顔してこっち見てた。黄色いジャージに赤い髪。ちょっと目に痛いかも。
「ったく、こんな変な所で寝んなよ」
まだボケーっとしてたけど、今の一言にカチンと来た。
「そっちこそどこ見て走ってんのさ!蹴られたとこ痛いんだけど!!」
「…蹴ったのは悪かった。けどお前も人が通るとこで寝てんなよ」
「だって俺次の試合までヒマなんだもん」
「仲間の応援とかあんだろぃ」
「あーどーせうちが勝つのわかってるC、あんまり面白い試合ねぇから観てても寝ちゃうんだよねー」
「へえ」
俺の返事に相手は意味ありげに笑った。なんか感じわるー。
「じゃあ次の俺の試合観てろよ。絶対ぇ面白い試合になるぜぃ?」
「A〜?」
「俺、立海大付属の丸井ブン太。シクヨロ」
「あー俺、氷帝の芥川慈郎」
「氷帝の芥川な。後でお前の試合も観に行ってやるよ。まずはAコートの俺の試合を観に来いって」
こっちの返事を聞きもしないで立海の丸井君は走って行ってしまった。そういや俺に躓いたのも、急いでたからだったっけ。時間ヤバイいんかな。Defギリギリの選手の試合なんて本当に面白くなんのかなー。まあ俺も宍戸や跡部がいなかったらとっくにDefになってるだろーけど。


ヒマ潰しにはなるかなーなんて思いながら、今にも止まりそうな足を引きずってAコートに向かった。
つまんなかったらまた寝ればEんだCー・・・。
おーやってるやってる。
今のとこ2−0で丸井君のリード。そー言や立海って強いとこじゃなかったっけ?今年の全国優勝校だった気がする。
丸井って選手は出場してなかったと思うけど、きっと強いんだろう。
一方的に強い試合って面白ぇワケじゃないんだけど。ああ、ねむ…。
「妙技・鉄柱当て!!」
!!
何だアレー!!
「30−0」
今、ネットのポールにボールが当たって相手のコートに!それもラインギリギリ!!
「妙技・綱渡り!!」
コードボール?ネットの上をボールが器用に転がって…相手側に落ちた!!
「マジマジスッゲー!!」
さっきまで寝そうだったのが嘘みてー。いつの間にか俺は丸井君のプレーに引き込まれていた。
アレで同じ一年!?すっげーや、マジそんけーする!!


結局6−0で丸井君のストレート勝ち。
丸井君の妙技は天才的だけど、まだ完璧じゃないみたいだった。
鉄柱当ては時々とんでもない所に落ちてアウトになったり、綱渡りはネットを転がらずに丸井君側に落ちたりしてた。
だけど、あの二つを完全にコントロール出来るようになったら・・・。
「お疲れ丸井君!!」
「芥川。どう?天才的だったろぃ?」
「うんマジスゲェよ!!ちょー面白い試合だった!!」
「今度はお前の試合を観てやるよ。何番コートだ?」
「Cコートだよ!ね、ね、丸井君もサーブ&ボレーヤーなんだね!!俺もなんだ」
「そいつは楽しみだな」
「決めた」
「は?」
「俺丸井君目指す!!」
「お、おう」
「だからリストバンドちょーだい!」
「何でそうなんだよ」
さっきのお返し。返事を聞く前に丸井君の手首からリストバンドをもぎ取って、Cコートに走り出す。
「ちょっと待て!返せって!!」
「絶対観に来てねー」
俺ワックワクしてきた!
次の試合では俺も開発中の必殺技出しちゃおっかな!
絶対ぇ勝って、丸井君と試合する!!
よーし、行くぞー!!


E.

この時はまだ、憧れの存在(*^_^*)

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