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□小欲知足
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欲が少なく、わずかなもので満足すること。
真田が俺にくれた書の言葉。きっと戒めとかいうつもりでくれたんだろうけど、そんなん余計なお世話。
生憎俺は我慢ってモノを知らない。食いもんとテニスと、ことジローに関しては。


「ブンちゃ〜ん」
ベッドに仰向けに転がりながら、情けない声で俺を呼ぶ。
上半身裸で下はトランクスだけ。今日は白地に赤のハート柄。本人曰く
「ブンちゃんの為の勝負パンツ」
だそうだ。
その勝負パンツの一点に小さくシミが出来ている。両手は後ろで軽く縛った。痛くないように、でも簡単には解けないように。
「で、俺が不機嫌な理由わかった?」
「わ、かんない。俺今日何かしたっけ?」
「はあ」
溜め息を吐いて、ジローの首筋に舌を這わせる。
途端にジローの身体は反応して、ジワァとまたシミが広がる。
そこを掌で包み込むようにして
「我慢しろぃ」
と耳元で囁けば、とんでもなくエロイ吐息がジローから零れた。
「はっ、ね、ヤるんならちゃんとえっちしようよ」
「……」
「俺、謝るC…」
据え膳食わぬは男の恥。でもこればっかりは譲れねぇ。
「じゃあ何で怒ってんのかわかったか?」
「わかんないけどっ。俺のせいなんだから…ひあ!」
「わかってねぇのに謝られても意味ねえよ」
尖らせた舌先で乳首を突いたら、ビクンと面白いほど反応が返って来る。
ほんとはそこまで怒っちゃいねえんだけど。やっぱ大事なことじゃん?
だからジローがちゃんと反省するまでこのまんま。
……とは言え俺もそろそろ限界。
「しょうがねえからヒントやるよ」
「ヒント?」
ジローのトランクスの端に指を掛けて思いっきり引っ張って、放す。
バチン!
と響くゴムの音と
「痛E!」
っていうジローの悲鳴。
「これ」
「ゴムパッチン?」
「じゃなくてパンツの方」
「パンツ?」
せっかく俺が与えてやったヒントも、全然役に立たないらしい。どこまで鈍感なんだ。
「お前最近試合したよな?」
「試合、青学とのやつ?」
「そーそー。そん時のお前の格好は?」
「ふつーにジャージだったよ」
コイツ未だに気づいてねえのかよ!!
「ちげーだろぃ?」
グリグリと先端を押すとグチュグチュとヤラシイ音がした。
「あ、ふ、ふ、んう」
「確かに上はジャージだったけど」
「は」
「下はパンツだったよな?」
「んー!!」
どうやら先にイってしまったらしく、一際高い声を出した後荒い息を繰り返している。
「思い出した?」
「何となく」
「お仕置き続行?」
「嫌です」
「なら言うことは?」
「ブンちゃん以外の人の前で脱いだりしてごめんなさい。これからは気をつけます」
「よろしい」
俺はジローの頭を撫でて、両手を自由にしてやる。
自分の服も脱いで、ジローのパンツも脱がせて。
「ま、まだヤるの?」
「こっからが本番だろぃ」


やっぱ俺には我慢は無理。
ジローのことは全部知ってたい。
ジローの感じるとこ知ってんのは俺だけで良いし、ジローのパンツの柄を知ってんのも俺だけで良い。
ジローとのセックスはいつも俺を満足させてくれるけど、逢う度に繰り返すのはどこか満足してないから?
もっともっともっと欲しい!
いつか俺ん中がジローでいっぱいで、ジローん中が俺でいっぱいになるまでは。
俺は我慢なんてしない。


E.

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