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□真剣勝負!
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久々に逢えたというのに、ブン太は慈郎に触れることもせずじっと見つめて…いや睨んでいた。
いつもはモグモグと動かしている口元も止まったまま、あまつさえガム自体が口の中には入っていない。
対する慈郎は瞼が降りて来そうになる度にカッと目を見開き、ブン太を凝視していた。


ことの発端は数分前
「久しぶりー。ずうーっと会いたかったー!!」
「俺も俺も」
「その言い方ビミョーだC。やっぱ俺の方がたくさんブンちゃんのこと思ってたんかな」
「そんなことねぇだろぃ!俺がお前を思う気持ちに勝てると思ってんの?」
「先に惚れた方が気持ちが大きいんだよ!だから俺の勝ち!!」
「惚れた者の負けって言うぐらいだから俺の方が上!後から気づいた方が愛はデッカクなってんだ!!」
「じゃあ勝負する?」
「やってやろーじゃん」
「ぜってぇ負けねぇ!」


以後ずっとお互いの好きなモノ断ちをして、先に痺れを切らした方の負けという勝負が始まった訳だが。
当然好きなモノの中には相手のことも含まれる。
よってブン太は慈郎の頭を撫でることもなく、慈郎もブン太に抱きつかない。
甘い物が好きな二人はおやつを食べもせず、キスすらしていない。
勝負に負けるのは癪だが、これでは一体何の為に一緒にいるのかわからない。
ここは一つ、大人な態度でわざと負けてやろう。そして思う存分慈郎を堪能するのだ。
腹を決めてブン太が慈郎に手を伸ばした時
「え・・・」
二人の声が重なった。
慈郎もこちらに手を伸ばしており、二人の掌が中間地点でぶつかっている。
その状態に一瞬固まり、同時に吹き出す。
「やめやめ。意味ねぇよこんなん」
「俺も〜。昼寝も甘いモンも我慢できるけど、ブンちゃんだけは無理」
笑いながら慈郎の頭を撫でれば、ブン太の肩に頭を預けて来る。
その顎をクイっと持ち上げれば、イタズラな光を湛えてクルリと瞳が回る。
どうやら思うことは同じらしい。
軽く触れるだけのキス。
「仲直りのチューだね」
「休戦協定ってことで」
「ちょーいんってやつ?」
「おー良く知ってたな」
「えへへ」
「続きもしちゃう?」
「Eよ」


E.

決着はおあいこ

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