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□お日さまの分身
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お菓子以外でブンちゃんの手料理食べるの初めてかもしんない。
「たいしたモンじゃねぇけど」
って言ってたけど、出されたオムライスは卵がとても綺麗にくるまっていた。
「ちょーおいC!」
ふんわりしててほんのり甘くて俺好みの味。
うちの母ちゃんとE勝負だC、こりゃもう結婚するしかないね!なんて言いながら楽Cく食べてたんだけど・・・
「どうした?」
「う…あの」
「何だよ?」
心配してくれてんのかブンちゃんに顔を覗き込まれたけど、俺の頭ん中は目の前のお皿のことでいっぱいだ。
「トマト…」
「は?」
「俺トマト嫌い〜」
付け合せに盛られた千切りキャベツとプチトマト。
最初は彩りの鮮やかさに気を取られて全然わかんなかったんだけど、トマトだ・・・。
「つってもお前、ケチャップもトマトだろぃ」
「味じゃなくてー食感?何かこうグニュって。うえ、気持ち悪E」
せっかく作ってくれたのに申し訳ないんだけど、想像しただけでも無理!絶対食えない!!
「ジローは俺と結婚したいんだよな?」
「うん」
「俺好き嫌いないから普通にトマトも出すぜぃ?」
「う、あ」
「俺のこと好きならちゃーんと残さず食べろぃ」
不敵な笑顔はめちゃくちゃカッコEけど、今の俺には悪魔にしか見えなかった。


十五分経ってもお皿の中にはトマトが残ったまんま。
オムライスとキャベツを食べ終えて、かれこれ五分くらいはトマトと睨めっこ。
とっくに全部食べ終えたブンちゃんは頬杖をつきながら俺を眺めてる。
「ジロー」
「うぅ…」
「俺のこと好き?」
「うん…」
「トマトは?」
「嫌い」
「トマトも俺も赤いぜ?」
「別に髪の色でブンちゃんを好きなワケじゃないC」
「でもそー思うと、ちょっとトマトのこと好きになんねぇ?」
うーんどうだろ?
あーでも確かに俺が嫌なのは食べた時のグニュグニュであって、見た目はうん、カワEかも。
「ジローは天日干しした布団の匂いが好きつってたよなぁ?」
「うん。お日さまの匂いの布団で寝るのってサイコーだよ!」
「だったらトマト食ってみろぃ。トマトもお日さまの匂いすっから」
「嘘だー」
「ホントだって」
「ホントにホント?」
笑顔で頷くブンちゃんを見て、俺も腹を決めた!
すーはー。大きくしんこきゅー。目ェ瞑って。
大丈夫、大丈夫、トマトはお日さま!!
「!!」
気持ち悪っ!
「ブンちゃんの…」
嘘吐きー!と言おうとしたところで、お日さまの匂いが鼻をかすめた。
あのちょっと埃っぽいような、あったかくて優C匂い・・・。


でもやっぱグニュグニュはダメだ。
涙目でトマトを噛んでたら、お皿に残ったもう一個のトマトに手が伸びて来てブンちゃんが食べた。
俺が飲み込んだのを確認してブンちゃんが頭を撫でてくれる。
「はい、よく食べれました」
ご褒美は何が良い?って、答えは一つしかないっしょ。
「ブンちゃん!」
抱きついたら笑いながらチューしてくれた。トマト味。
洋服のせい?ブンちゃんからもお日さまの匂い。
「トマトもブンちゃんもお日さまの仲間だねー」
「お前の方がお日さまだろぃ」
「A、どこが?」
「フワフワしてっとこ。あと髪の光り方」
そーかなー?って首を捻ったら、もっかいお日さまのチューされた。


E.

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