short

□来世行き電車
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電車に乗るなり慈郎はブン太の肩に頭を持たせ掛けて来た。フワフワの毛先が首筋に当たってくすぐったい。
今日は一日中遊園地で散々遊んだのだから、さぞかし疲れ切っていることだろう。
自分も眠るつもりでミュージックプレイヤーのイヤホンを付けた。
「ん…ブンちゃん何聴いてんの?」
眠ったとばかり思っていた慈郎がうっすらと目を開けて、こちらを見上げて来る。
「ORANGE RANGE」
「オレンジ…俺も聴くー…」
「つってもお前何聴いても眠くなるだろぃ」
「Eからー」
溜め息を吐きつつ、左のイヤホンを外し既に瞼が下りている慈郎の左耳に差し込む。
暫くすると音楽に混じって穏やかな寝息が聞こえて来た。
電車の揺れに身を任せブン太も目を閉じた。


「んがっ!…この曲Eね」
慈郎の囁きにブン太も目が覚めた。トロンとした目で曲を聴いている。
「生まれ変わったら花かぁ〜。俺は女の子になってみてぇ」
「!」
心臓を鷲掴みにされた気がした。
「ブンちゃんも女の子ね」
「意味ねぇよ」
「Aー、だってブンちゃんが女の子になったところ見たい!」
「あのな」
心配した自分が馬鹿だったと、ブン太は肩を落とした。
「男同士でもイケるんだから、女の子同士でも大丈夫っしょ」
「そーゆー問題か?」
「ブンちゃんが猫で俺が羊になっちゃっても、俺はブンちゃんを見つける自信あるよ」
「なら俺が人間でお前が花だったら、枯れないように世話してやる」
「うひひ、よろしく〜」
「俺もシクヨロ」
「でもやっぱC」
「あ?」
「も一回俺に生まれたい」
「…俺も」
「そんでまた恋人になって・・・」
カクリと慈郎の首が揺れる。
頭の中に手を突っ込んで掻き回し
「寝ろ」
と一言。
「ん…おやすみ」
自分にもたれる慈郎の頭に自分も頭を預け目を瞑る。
目指す駅まであと三つ。


E.

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