short

□木漏れ日の中でおやすみ
1ページ/1ページ

初めて丸井君ちにお邪魔。
今日はたまたま氷帝も立海もテニス部は休み。加えて家族みんなお出かけだから遊びに来いよって丸井君が。
だから俺もう夕べからワックワクして来て、あんまり眠れなかった。
だけどせっかくの丸井君との二人きりの時間なんだ、絶対寝ない!
二人っきりで何をしよう?夕方には帰るからそこまでイチャイチャは出来ないだろうけど、ああでもチューぐらいはしたいなあ。
なんてニヤニヤしながら丸井君ちのピンポンを押した。
ガチャッとドアが開き、顔を覗かせたのは丸井君…じゃなかった。
確かに丸井君そっくりだけど、いつもよりずっとちっちゃい。俺より背ぇ低い。
予想外の出来事に俺もBックリしてるけど、向こうも向こうでキョトンした顔で俺を見てる。
「おー芥川。迷わなかったか?」
「あ、うん。それは大丈夫だったんだけど・・・」
廊下の奥からいつものサイズの丸井君と、目の前の丸井ジュニアより更に小さい丸井ジュニア2号が出てきた。
「悪ぃ、俺が出掛けないっつったら、弟たちも家に残るって言い出して」
「ああ丸井君の弟か、納得」
丸井君は申し訳なさとバツの悪さが入り混じった顔してるけど、俺は全然気にならない。
ちょっと予定は狂っちゃったけど、これはこれで楽しそうだC!
「じゃあ今日は四人で遊ぼう!」
俺はリビングに通されて、丸井君がお茶の準備をしようとキッチンに向かう。その後をジュニアたちがトコトコ付いて行く。
来る途中で買って来たケーキのことを思い出して
「あ、そうだ丸井君!これお土産」
って声を掛けたら、三人ともがクルッとこっちを振り返った。
あ、そうか、ここは丸井家なんだから全員“丸井君”なんだった。


俺が持って来たケーキと丸井君が出してくれたクッキーと紅茶でおやつにしてから、さっそく男四人での遊びが開始された。
下には妹しかいない俺にとって、弟と遊ぶのって新鮮だ。
お絵かきで描くのはお花じゃなくて怪獣だったり、ごっこ遊びにしたってお人形さんじゃなくって、ヒーローごっこだC。
ヒーローごっこする時、丸井君がスッゲェ真剣に悪者になりきるから思わず笑っちった。
笑い過ぎて味方のハズなのに殴られたけど。
「まるっ」
また丸井君って呼びそうになって、呆れた顔された。
「今日は丸井が三人いるんだから、他の呼び方考えろぃ」
他の呼び方?
うーんと、うーんと、丸井ブン太だから・・・
「ブンちゃん」
いきなり呼び捨てはハズカCから、あだ名を作ってみたんだけど微妙な顔された。
それでも丸井君って呼ばれるよりマシと判断したのか、頷いて
「じゃ、それで」
オーケーが出た。
そっからまたヒーローごっこしたり、積み木で遊んだりして、ジュニアたちは疲れたみたいで眠ってしまった。
弟たちをソファに寝かせて毛布を掛けてあげるブンちゃんの姿をぼんやり眺めながら、Eお兄ちゃんだなあと思う。
そういや俺も昔、兄ちゃんとこんな風に遊んで貰ったっけ。
「ジロー、俺の部屋行こうぜ」
あまりに自然に呼ばれて俺は固まってしまった。
「何だよ?」
「名前で呼ばれたからBックリしちゃって」
「俺もブンちゃんって呼ばれてんだから、別に良いだろぃ」
「うん、どんどん呼んで。ちょー嬉C!」
嬉しくて笑ったら、弟たちが起きるって怒られた。


「疲れたー」
階段昇ってブンちゃんの部屋に入るなり、俺はベッドに倒れ込んだ。
本当なら初めて入るブンちゃんの部屋、じっくり観察したいところだけど。
昨日あんまり眠れなかったからなぁ・・・。
「ごめんな、今日は」
「んーん。楽Cかったよ」
クスクス笑いながらも、俺の瞼は降りて来る。
ブンちゃんも一緒に布団に潜り込んで来るのを気配だけで感じる。
「今度はちゃんと二人でデートしような」
「ん。約束だよ」
ふわり。唇に柔らかい感触。
もっともっとブンちゃんとラブラブなカップルになりたいけど、今はこれで充分。
「俺、スッゲェしあわせ・・・」
ちゃんと言えたかどうかわからないまま、俺は意識を手放した。


E.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ