special

□星合いコンパス
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機織の上手な織姫と働き者の牛追い牽牛。
その頑張りが認められて、織姫の父親である天帝に結婚を認められたのに、結婚生活が楽し過ぎて二人は怠け者になってしまった。
怒った天帝は二人を天の川の両端に引き離した。
その後、反省して働き者に戻った二人を許して、一年に一度だけ7月7日だけ逢うことが出来る。


「洒涙雨だな」
「ふあーあ…さいるいうって何〜?」
それまで机にうつ伏せて寝ていた慈郎は、目を擦りながら窓辺にもたれかかる宍戸を見上げた。
「七夕の日に降る雨のことを洒涙雨って呼ぶんだとよ。天の川が増水するから織姫と彦星が逢えないらしーぜ」
「じゃあ今日は逢えないんだねー。一年に一回のチャンスなのにぃ」
「ったく激ダサだぜ。逢いてーんならカササギなんかに頼らず、自分で船でも出しゃ良ーだろ」
「とかEながら洒涙雨なんて知ってるんだから、宍戸ってロマンチストだよね〜」
「ばっ!洒涙雨はさっき授業で先公が言ってただろーが」
赤くなった宍戸に小突かれながら、慈郎はエヘエヘ笑う。
「で、お前この後どーするよ?」
「んー…宍戸は?」
「忍足や岳人たちとゲーセン行くかっつってんだけど、ジローも来るか?」
「楽しそーだけど、やっぱEや」
「何だよそれ」
呆れ顔の宍戸にゴミンね、と笑ってまた机にうつ伏せる。
「また寝んのかよ」
「うんー、低気圧だと眠くなる、ん、だ…」
「お前の場合はいつもだろーが」
溜め息と共に吐き出された宍戸の声は届かない。


湿気のせいで天然パーマはいつも以上に絡まりやすい。
気圧が低さで頭も少しボーっとする。
それでも慈郎は鼻歌を歌いながら歩く。
東京では差していたオレンジの傘は、神奈川に降り立ったら開く必要がなくなった。
空は曇っているから、こちらでも織姫と彦星は逢えそうにないけれど。
「あ、いたいた!ブンちゃーん!」
「おージロー!」
「あのね、水曜Bはウチのテニス部休みなんだ」
「そうみてぇだな」
「でね、きょーは七夕でしょ?」
「まあ、そうだな」
「だから逢いに来たよ」
「…七夕は関係なくねぇ?」
「あるよー!今年は天気悪くて織姫と彦星は逢えないんだからー!!」
「だから?」
「だから、俺達が織姫と彦星の分もEっぱいイチャイチャすんの!」
キラキラと目を輝かせる慈郎の頭を、呆れながらもクシャクシャ撫でる。
「氷帝は休みかもしんねぇけど、ウチはきっちり部活あんだよ」
「うん!俺応援する!!」
「イチャイチャすんのはその後な」
「うん!!」

E.

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