special

□チョコレートに愛を溶かして
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今年のバレンタインは運良く日曜日。学校で告白のチャンスを狙ってた人にはドンマイだけど、俺的にはサイッコー!!俺は休みじゃないと好きな人には逢えないからね。
鳳の誕生会を断って、神奈川行きの電車に揺られてるとこ。
…鳳も宍戸と二人で過ごせばEのにー。
それにしてもチョコ作りなんて生まれて始めて。今まで貰う側けだったから、こんなことになるなんてマジBックリだよ。
だだ溶かしてハート型に固めるだけでEんかな、なんて軽く考えてたけど、これでなかなか神経使うんだね。
最近妙にませてきた妹に何回も注意されながら、ようやく出来た。
ちょっと形は悪いけど、愛はたーっぷり詰まってるかんね!!
ああでもブンちゃんはおととい時点でたくさんチョコ貰ってんじゃないかな。去年は72個だったって聞いた。
明日渡す人もいるだろうから、まだそこまでじゃないかもだけど…やっぱりモテるんだよな〜。
全部が全部本命チョコじゃないだろうC、ブンちゃんは甘い物好きだから
「俺以外の人からチョコ貰っちゃダメ!」
なんて言えない。
俺だって貰ってるC、でもそれはブンちゃんが一番だからこそで、ブンちゃんは…どうなんだろ。
夕べチョコが完成した時は、ブンちゃん喜んでくれるかなーなんて浮かれてたけど、これより上手な手作りチョコなんていっぱいあるんだろうな。奮発して買った美味Cチョコも。


逢いたいのと気が重いのがグルグル頭ん中を巡って、どうしたらEのかわかんないまんま、ブンちゃんの家に着いてしまった。
ピンポンを押すとすぐに開くドア。いつものお家デートと同じ。
「よぉ」
「お邪魔します…」
「何か今日元気ねぇな?」
「そんなことないよ。久しぶりで緊張してるだけー」
「ふーん?まぁ上がれよ」
鋭いよなぁ。俺のちっちゃい変化に気付いてくれんのはスゲー嬉Cよ。けど、今は複雑。
先にブンちゃんの部屋で、ブンちゃんを待ってる。これもいつもと一緒。
何回来ても、ワクワクしながら部屋を見回してブンちゃんの足音を待つんだ!!
「あ…」
ベッドの横、紙袋から覗いてるカラフルなラッピング。
いつもは何か、発見する度に嬉しくなんのに、今日のはちょっと…寂しい。
「43個」
「え?」
「チョコの数。今んとこ43個。明日は何個貰えっかなぁ。去年の記録は越えてぇし」
すんごく嬉しそうだ。モテない恋人よりモテる恋人の方がもちろん誇らしいんだけど、落ち込んでるだけに、複雑。
「お前は?」
「Aとね、35個」
「俺の勝ちだな」
「まだわかんないじゃん!!明日で逆転するかもしんないC」
「ないない」
「もー」
むくれながらブンちゃんの持って来たおやつを見やる。
「チョコケーキ?」
「フォンダン・ショコラ」
「へぇ?」
「中に溶かしたチョコが入ってんだよ」
「ブンちゃんの手作り?」
「当然だろぃ」
「いただきまーす!!」
「その前に」
ケーキに手を伸ばした俺の手を抑えて、反対の手を俺に向かって掌を差し出す。
「何?」
「チョーコー」
「…忘れちった」
「じゃあ、これも食っちゃ駄目」
「A!!」
「俺がどんだけチョコを楽しみにしてたと思ってんだよ!」
「チョコならいっぱいあるじゃん!」
「俺が欲しいのはジローのチョコに決まってんじゃん」
「だったら他のチョコの話なんかしないでよ!!」
あ…。
しまったと思った時けど、もう引っ込められない。
ブンちゃん一瞬驚いた顔して、すぐにニヤニヤしだした。
ガムを膨らましたり、萎ませたりしながら、こっち見てる。
うーあー恥ずかC。
「へぇ、なるほどねぇ」
「……」
「ジーローウー」
「うぅ」
「つまり嫉妬ってやつだよな」
あぁ、これが嫉妬なんだ。あんまり気持ちのEもんじゃないな。
「ってことは、ちゃんとチョコも作ったんだろぃ?」
バレてるC。
勝ち誇ったような笑顔で「出せ」
って言われたら、隠す必要も感じなかった。
「他の子の美味しかったヤツと比べないでね」
「あ?それは無理だろぃ」
「な!!」
んで、って言おうとしたら遮られた。
「だって俺チョコ食うのこれで一個目だし」
「!!」
さらりと言われて、呆気に取られる。何だよ、ウジウジ悩んでバカみてぇ。
今度こそ、とフォン何とかに手を伸ばしたら、また掴まれた。
「ダーメ」
「チョコあげたじゃん。俺だってブンちゃんが作ったの食べたい!!」
「でも嘘吐いたからなー」
笑いながら、ブンちゃんの唇が降りて来てお互い目を開けたまんま、ムードもへったくれもないチュー。
…っていうか。
「俺がチョコ食ってる間、お前はそれ噛んでろ」
おさがりのガム。今日はレモン味。
ブンちゃんはジュースでガムのフレーバーをなくすと、ラッピングを解いていく。
「おー。ちょっと歪なところがまた可愛いねぇ」
「言わないでよ」
ニヤニヤしながら、先っちょを折って口元に運ぶ。
「美味い」
「ホントに?」
「愛を感じるぜぃ。お前も食う?」
ブンちゃんのケーキかなって、頷いたら。
ふわり。もう一度ブンちゃんの唇が重なる。
今度は俺の作ったチョコが移される。
「な?究極に甘いだろぃ?」
ブンちゃんの言う通り、チョコレートは甘かった。
嫉妬もガムも全部全部溶かしちゃうくらいに。


E.

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