special

□結婚予定日
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珍しく夜中に目が覚めた。まだ意識は半分夢の中で、頭がぼんやりしている。
その感覚が心地良くて、再び慈郎は目を閉じた。
何だかとても幸せな夢を見ていた気がする。
普段は睡眠量の割に全く夢の内容を覚えていないのに、と口元に笑みが昇る。
ああ、そうだ、ブンちゃんが出てきたんだ。
夢の中で俺たちは一緒の家に住んでいて、今よりもっと大人で、毎日一緒に笑ったりはしゃいだり、時々小さなケンカをしたり・・・。
自分が望む未来だ。だけど決して訪れることのない未来。
日本は同性同士の結婚は認めていない。だからこうして夢の中だけでも、ということか。
幸せだ。夢の中で望む未来を手に入れられた。そしてそれを覚えていられた。何て満ち足りた気分なのだろう…。


しばらく夢を反芻し、余韻に浸っていたのだが、不意に胸が締め付けられた。
胸の痛みを堪えるように慈郎はギュウッと掛け布団を握り締める。
何が悲しいのかわからないまま、堪らなくなって目を開く。
携帯のディスプレイに浮かぶ時刻は0時13分。
きっと彼は眠っている。
それでも良い。想いを飛ばさずにはいられない。

To:丸井ブン太
sub:問題!!
本文:今日は何の日でしょう?

自分で読んでも理解不能な内容を、泣き出しそうになりながら送った。
自分が突発的な話題を振ってしまうのはいつものことで、優しい彼は呆れながらも必ず何かしら返してくれる。
返事が返ってくるのは明日か、明後日か。
知らねぇよ!!
でも良い。構ってくれれば何もいらない。
幾分落ち着いて来て、駄目もとで目を閉じた時。
「!!」
特定の人物の時しか鳴らないメールの着信音。
信じられない気持ちでメールを開く。

From:丸井ブン太
sub:お前が嫁に来る日
本文:01/26で丸井慈郎の日だろぃ?

予想だにしなかった回答。日付を確認してふき出す。
「ブンちゃんってばオットメー」
笑ってるのに画面が霞む。先程までの悲しみはないのに。

To:丸井ブン太
sub:せいかい〜♪
本文:さっすがブンちゃん!マジ天才!!さっきまでね、ブンちゃんの夢見てたよ(^o^)ちょー幸せだった!!

From:丸井ブン太
sub:当たり前だろぃ
本文:俺も俺も。お前との結婚生活してたぜ☆そのうち夢じゃなくて現実にしてやるよ( ̄ー ̄)

「アハハ。Bックリ!」

To:丸井ブン太
sub:待ってるからね!!
本文:楽しみ〜♪それじゃあ俺寝るね!おやすみなさい(u_u)zzz

「やっぱC、俺ブンちゃんと結婚するんだー、ワックワックしてき…」
早く大人になりてぇ。
呟いたのは夢の中。


E.

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