special

□Jingle Bellを君に
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天皇誕生日よりもクリスマスこそ祝日にするべきだと思う。
そりゃ天皇がいてくれなきゃ困るのはわかってっけど、誕生日は誰しも平等に訪れるモンだし、国民全員がプレゼント持って皇居に押し寄せるなんて無理。
どうせ天皇にかこつけて祝日を増やしてぇだけだろぃ。
だったらクリスマスを祝日にした方がよっぽど家族・友達・恋人その他もろもろの人間関係がスムーズに築けて、世の為・人の為になんじゃん?
なんてことを思っちまう俺は非国民なのだろうか?
「丸井先輩!」
「おー赤也」
「ケーキ出来たんスか?みんな部室で待ってますよ!」
「もうちょい。あとはコレを飾りつけるだけ」
立海まんじゅうと適当に買って来て貰ったお菓子を並べていく。
・・・ッチ、誰だよポッキーなんか買ったヤツ。
「美味そうじゃないッスかぁ〜」
完成したばっかなのに、早くもつまみ食いしようとした赤也の手を叩き、料理部に礼を言って、俺は調理室を出た。
赤也がヒョコヒョコ付いて来る。
部活を引退してからめったにレギュラー全員が顔を合わせることもなく、もうすぐ受験も本番だからと、今日だけ部室に集まることになった。
赤也は二年生だけど、まあ夏を一緒に戦った仲間だしってことで参加を許可した。
・・・コイツにしてみれば参謀に会いたいだけなんだろうけど。


「遅いぜよ。待ちくたびれたナリ」
「これで全員揃いましたね」
「うむ、赤也もいるな」
「それじゃあ、せーの」

「メリークリスマス!!」

配られたクラッカーを一斉に鳴らして、ささやかなパーティーが始まった。
部室は引退した時と何も変わってなくて、クリスマスらしい飾りつけなんて全然ねぇけどやっぱり落ち着く場所だった。
「うお!結構豪華じゃん!」
「スーパーにまだいろいろと残ってました」
「イブじゃから多めに用意しとんのじゃろうて」
奮発して四千円するオードブル。唐揚げだの、フライドポテトだの、いかにもクリスマス!うまそー。
「丸井が作ったケーキを切り分けても良いかな?」
「早く食いたいッス!!」
「良いぜ」
「なら俺が切ろう」
俺が作ったRIKKAIスペシャルを柳が正確に八等分する。
「美味しいです」
「だてにお菓子好きやっとるワケじゃないのぅ」
「やっぱ俺って天才的だろぃ?」
「む」


ガヤガヤ好き勝手に談笑して、飲み食いしてるうちに時間はあっと言う間に過ぎた。
そろそろ帰らねーと校門閉まっちまうかも。
なんて思いながら、知らず知らずにみんなの輪から少し外れた。
チクショー、結局カップル同士でイチャイチャしやがって。
仁王と柳生はスーパーの買出しに一緒に行ったし、真田と幸村に関しては往年の夫婦みたいな雰囲気出してる。
赤也と柳は…子供と母親だな。
ぼんやり仲間の姿を見てたら、ポンと背中を叩かれた。
「同情ならいらねぇぞハゲ」
「なら良い」
「待て。今のは言葉のあやだ。同情はいらねぇけど話相手は欲しい」
立ち上がりかけたジャッカルはヤレヤレとでも言いたげに、俺の隣に腰掛けた。
「お前がジローだったらなー」
「悪かったな」
「全くだぜ。でもこうやって立海だけで過ごすのも悪かねぇよ。つーか楽しいし…ちょっと見ててウザイけど」
ジャッカルは苦笑して、恋人がいるだけでもマシだろって慰めなんだか、自嘲なんだかわかんない言葉を寄越した。
今度は俺がジャッカルの背中を叩いてやる番。
「大丈夫だ、ジャッカル。高校行けばきっと色白の巨乳がお前のことを待っている」
「巨乳じゃなくてグラマーだ」
「もしくはジャッカルみてぇな男が待っている」
「・・・やめてくれ」
それから名残を惜しみながら、校門で別れた。
やっぱ俺は立海で良かったと思う。ジローとは遠距離になっちまうけど。
今頃アイツは跡部邸で豪華なクリスマスを氷帝メンバーと過ごしていることだろう。
別に羨ましかねぇよ、俺にだって仲間はいるんだし・・・。


家に帰ったら、晩飯の食って、風呂入って寝ようと思った矢先に。
ケータイがメールの着信を告げた。

From:芥川慈郎
sub:メリークリスマス
本文:みんなでパーティーしてたら、なんだかブンちゃんにすっごく逢いたくなっちった。
だからスゲェイルミネーションのおすそわけです。
神奈川は雪降ってますか?東京は晴れてるよー、残念。

添付されてる画像には派手に飾り付けられた、おそらく跡部邸。
…金持ちのやることはわかんねぇ。
でもまあ綺麗っちゃ綺麗だな、ジローが俺に見せたくて送ってくれたモンだし…跡部の家なのが引っ掛かるけど。

To:芥川慈郎
sub:メリークリスマス
本文:画像サンキュー。悪趣味な跡部にしては良いセンスじゃん?
こっちは部室でパーティーだった。ケーキは俺が作ったヤツ。美味そうだろぃ?
神奈川も雪は降ってねぇ。

ケーキの写真を添付して送信。
五分と置かずケータイが鳴る。今度は電話だった。
「もしもし」
「ちょー美味そー!!来年のクリスマスに作ってよ!」
「ヤダ」
「Aー何でー」
「あれはRIKKAIスペシャルだ。氷帝の人は食べれませーん」
「ケチー」
「その代わり」
「その代わり?」
「ジロースペシャル作ってやる」
「マジでー!?ちょーウレC!!」
「だから来年は絶対ぇ会いに来い」
「行く行く!うわー今からワックワクして来た!」
はしゃぐジローを笑ってるけど、同じぐらい楽しみにしてるのは内緒だ。


サンタが本当にいるとすれば、来年の俺にはジローをプレゼントして欲しい。
世界中の恋人たちには雪を。
あーあとジャッカルには色白巨乳の女か色黒な男でも。


E.

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