銀魂長編

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結局、昨日は銀時とゲームやらなんやらで遊び呆けて、土方に連絡すらしないで眠りに就いた。携帯のけたたましいアラームが鳴って同時に電源もついた。アラームを切って待ち受け画面を見れば不在着信の文字が。

「二件かよ」

もうちょっとかけてくれてもいいんじゃないの。もしかして事故ったんじゃねえかとか変質者に襲われてんじゃねえかとか考えないわけ。まあ有り得ないけど。分かってるけど。

「ぶっ」

突然頭に腕が回されてそのまま何かに押し付けられた。すぐに銀時の胸だと分かった。力加減を知らないのかこいつは。苦しい死ぬ。こんなところで死んで新聞沙汰とか洒落にならん。十九歳女子大生、恋人に抱き枕代わりにされ窒息死。うわ、笑えないけど笑える。身内も気まずいだろ。悲しんだ方がいいの?笑った方がいいの?ってなるだろ。とか色々考えて頭の中で謝って銀時の鳩尾に拳を叩き込んだ。

「ぐふっ!」

衝撃で離れた身体はそのまま腹を抱えて蹲る。ごめん、加減なんか必要ないと思って。中途半端な衝撃じゃ絶対離れてくれないと思って。けど実際に謝ったら負けな気がするので口には出さない。だって銀時も悪いもんね。五分五分だろ。

「つか何時だ今」

右手に掴んだままだった携帯のディスプレイを見れば丁度九時だった。まあバイトは夜だし、土曜だから学校もないし。

「………おま、鳩尾はないわ」

漸く痛みが引いたのか吐き気が治まったのか、銀時が青ざめた顔であたしを睨む。全然怖くないわ。何時にも増して覇気ないもの。

「あんた起き抜けに人に何やったか考えてみ」
「なんもしてねーよ。やらしいことは考えてたけど」
「そっちのがマシだわ」
「え、マジ」
「もう死ぬかと思った。免許証のあたしの写真が新聞に小っちゃく載るの想像した」
「なんだそれ。余裕綽々じゃねえか」

腹を抱えて丸まっていた銀時がその体勢のまま身体をうねらせて近づいてきた。

「ちょ、気持ち悪っ」
「仕方ねえだろいってーんだよ」
「つか起きんの面倒くさいだけだろ」

目の前まで銀髪が迫ってきて転がって逃げようとするが(あたしも起き上がるのが面倒くさい)あっさりまた腕の中におさめられてしまった。

「ボク抱き枕ないと眠れないんですぅーってか」
「殺すぞ」
「いやん熱烈ゥ」
「ハイハイもうそれでいいから黙ってろ」

結局二人で二度寝して最終的に三度寝までしてあたしはバイトに遅刻した。




 

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