† sin3  (長篇小説)

□お姫さま(へソン)を手に入れろ 
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(3)





E「じゃ、帰るわ」

エリクは、そう言って立ち上がった。



H「お前、車じゃないの?」



E「大丈夫だよ」



H「大丈夫なわけないだろ、捕まったらどうするんだ」



E「お前みたいに?」



へソンが飲酒運転で捕まったことを、エリクがからかう。



H「そうだよ、悪かったな」



へソンが拗ねたように、唇を尖らせる。



エリクが、それを見て小さく笑った。










H「今日は遅いから、泊まってけよ」



E「えっ?」

思いがけないヘソンの言葉に、エリクが驚く。



H「何、驚いてんだよ、捕まったら、まずいだろ?」



E「いや、ヘソンと一緒に寝れるなんて」

エリクがふざける。



H「お前は、ソファーだ」

ヘソンが、にべもなく言う。



E「ええ〜一緒に寝たいよ」

エリクがわざと、大袈裟に駄々をこねて見せる。



H「一緒にって、お前は俺と同じ部屋じゃ、眠れないだろ?」



E「眠れるよ」



H「嘘つくなよ」



E「嘘じゃない」



H「お前、俺と同じ部屋だった頃、言ったじゃないか」



E「何を?」



H「何をって、俺と一緒じゃ、落ちついて眠れないって」



エリクは、ほんの一瞬、驚いた顔をしたが、



E「覚えてない、ってかそんな、百年も前のこと」








そうだろうな、その言葉で、

俺が、どれだけ傷ついたかなんて、

お前は知らないよな

へソンが心の中で、そう呟く。







H「とにかくお前は、ソファー! 毛布ぐらいは、貸してやる」



E「ジニとは、一緒に寝るのに」

エリクが、拗ねて言う。



H「ジニはいいんだよ、俺の赤ちゃん鳥なんだから」



E「・・・・・・俺、明日オフ、お前は?」



H「明日は、撮影で朝早い」



E「そうか」

エリクが、残念だというような顔をする。



H「合い鍵、渡すから、今度会う時に返して」



E「わかった」













夜中に目が覚めたヘソンは、キッチンへ行くと、

冷蔵庫から、ミネラルウォーターを、取り出して飲んだ。

リビングに目をやると、エリクが長い手足を、

ソファーから、はみ出させて寝ていた。





ソファーに近づいたヘソンは、

しゃがみ込んで、エリクの顔を覗き込む。

《韓国一の花美男》

と言われているだけあって、綺麗な顔立ちだ。

じっと、エリクの寝顔を見つめる。







へソンは、エリクの真意が、全く分からない

『結婚しよう』

とまで思っていた彼女と別れて、

自棄になっているのか?





例え、そうだとしても、今のへソンには、

エリクの冗談に付き合う、気持ちの余裕は、まだない。






だって、お前あの時、熱愛宣言したじゃないか。

大切な人って、言ってたじゃないか。

幸せそうだったじゃないか。

あれは全部、嘘だったのか?






俺を愛してる、って言ってることが、

嘘なんだろ?








・・・・もう少しなんだ。

あと少しで、お前を、完全に諦められる。

だから、お願いだ。







H「愛しているなんて、簡単に言うな」



ヘソンはそう言うと、

顔を覆って、

声を殺して泣いた。






微かに人の気配を感じて、

エリクが目を覚ました。

傍らで、ヘソンが泣いているのに気づくと、

慌てて目を閉じた。







どれぐらいそうしていたか

ヘソンは泣き止むと、

エリクの髪に手をやり、

しばらく愛しげに、撫でていた。





H「・・・エリク」

小さな声で、名前をそっと呼ぶ。




やがて、エリクの毛布をかけ直すと、

部屋へ戻って行った。






その後ろ姿を、エリクはただ、じっと見つめていた。











2009/02/04[Wed]
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