† sin3 (長篇小説)
□夢から覚めても あなたを想う
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「エリク、どこ? 」
バタバタという足音と共に、
へソンの声が聞こえた、と思う間もなく
リビングのドアが、勢いよく開けられ、
ヘソンが、泣きながら入ってきた。
俺は読んでいた台本を、テーブルに置くと、
ソファーから、立ち上がった。
途端にヘソンが、俺の胸に飛び込んでくる。
「エリク、エリク 」
ぎゅっとしがみついてくる、ヘソンの細い身体を抱きしめる
「エリク、本物?夢?」
腕の中から、俺を見上げたヘソンが、涙目で聞く。
夢を見て、寝ぼけているヘソン
今日で、何回目だろう?
目が覚めて、俺が隣にいないと、
こうやって、泣きながら探す
「本物だよ 」
髪を撫で、そう答える
背中に回されたヘソンの手が、
俺の存在を、確かめるかのように、
シャツを、きつく握りしめる。
「エリ・・・ク 」
名前を呼び、俺の胸に顔を埋めて、泣きつづけるヘソン
聞いてる俺まで、胸が締め付けられるような泣き方だ
いったい、どんな夢を見て、こんな風に泣くのか・・・・
かける言葉が、見つからず、
小さく震えている背中を、ただ撫で続ける。
どれぐらいそうしていたか、
やっと泣きやんだ、ヘソンの涙をそっと拭う。
「ヘソン、とりあえず座ろう」
俺にしがみついたまま、離れようとしないヘソンを、ソファーへと促した。
「やだっ 」
そう言って、いっそうきつく、しがみついてくる
「やだって」
寝ぼけている時独特の、甘えたような言い方が、可愛いくて、
思わず、口元が緩む。
「離れたら、エリクどっかに行っちゃうから、嫌だ」
「どこにも行かないって・・・・」
しがみついたままのヘソン、嬉しいけれど、
いつまでも、この状態でいるわけにもいかない、
ヘソンを抱いたまま、ソファーに腰を下ろす
ヘソンを抱き上げ、膝の上に、向かい合わせに座らせた。
普段のヘソンなら、こんな体勢、絶対嫌がって暴れるだろう。
「また怖い夢、見たのか?」
おとなしく膝の上にすわる、ヘソンの額にかかった髪を、かきあげる
「・・・うん 」
「どんな、夢?」
言いたくないのか、本当に覚えていないのか、
ヘソンの答えは、いつも同じ
「・・・・・覚えてない 」
「そうか」
「うん」
「泣くほど、怖かったのか?」
「・・・うん 」
まだちょっと、寝ぼけているのか、
首を傾げて、ぼんやりした子供のような表情で、
俺を見つめる。
ヘソンの顎を上向かせ、そっとキスをする
触れるだけのキスを、繰り返した。
「はぁっ 」
唇を解放すると、ヘソンが小さなため息をついた。
「エリクの唇だ 」
そう言って、俺の頬を両手で、包み込むと
「エリク・・・・本物だ、夢じゃない」
「夢じゃないよ」
「うん 」
ヘソンが、安心したように、ふわりと笑った。
2009年05月13日(Wed)