† sin1 (短篇小説)
□揺れる ちょうちょ 【へそんの帯】
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【後篇】
「うわ〜、何やってんだよ」
慌てて止めようとした、エリクの胸倉を掴み、
「エリク〜
普通に結べよ!
ふ ・ つ ・ う ・ に ! 」
ヘソンが一言一言、区切って言った。
「はい・・・・わかりました 」
凄んで見せたって、可愛いだけだって、
という言葉は、飲み込んで、
これ以上、ヘソンの機嫌を、損ねないように、下手にでる
ほどけた帯を、直すため、ヘソンの後ろへ周り
さっきよりも、丁寧に結び直す。
「出来た 」
直に、見ることを諦めたヘソンが、帯に手を触れ形を、確かめている。
しばらく触った後、首を傾げて、エリクを見た
「なんかさっきと、同じような気がする 」
「全然違う、今度のは、かっこいいぞ」
「ホント?」
訝しげな眼差しを向ける、
ヘソンの目をじっと見つめ返し、
「神に誓って」
この上なく、真剣にエリクが、そう答えた。
伊達に俳優は、やっていない。
演技するのは、お手のものだ。
エリクに、見つめ返され、俳優モードの
セリフを言われたヘソンが、
一瞬たじろぎ、ほんのり頬を赤く染める。
「じゃあ、いい、これで」
文句を言いながらも、浴衣は気に入ったらしい、
エリクを見て、ヘソンが嬉しそうに笑う。
そんなヘソンが、可愛いくて、抱きしめようと、
伸ばしたエリクの腕は、すんでのところで、スルリと交わされ
「ヘソン〜 」
情けない声で、エリクが呼ぶ
「俺は、忙しいんだよ 」
素っ気ない口調で、ヘソンはそう言うと、
ミヌと見ていたプレゼントの山を、片付け始めた。
手持ち無沙汰になったエリクが、
ベッドに腰を下ろし、せわしなく動くヘソンを眺める。
ヘソンが動く度に、腰に巻いた、ちょうちょが揺れる。
エリクによって、形作られた、本日二回目のちょうちょ結び
単純なヘソンは、すぐに騙される。
「可愛いよなぁ」
ちょうちょを付けたヘソンを見て、
エリクの目尻は、下がりぱっなしだ。
あの帯を、ほどくまで、
あと、どれくらいの時間が、かかるだろうと
エリクは散らかった、プレゼントの山を眺めた。
手伝ってやったら、早く終わるだろうけど、
きっと、ちょうちょの帯をつけた、かわいいヘソンを見るのも、
最初で最後だろうと、傍観することに決めた。
お楽しみは、最後に取っとくもんだしな
頭の中で、帯をほどくシュミレーションをするエリク
エリクが、そんなこと考えてるとは
知るはずもないヘソンは、
「ったく、散らかしたヤツが、かたづけろって」
既に、その場にはいないミヌに対して、
文句を言いながら
せっせとプレゼントの山を、片付けていた・・・・・
Fin
2009/07/13