† sin2 (短篇小説)

□ 枷  【痛みさえも】
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(eric side)




腕の中に、ヘソンを抱けない日があると、

自分の身体の一部分が、欠けたような、心許無い気分になる。

そんな日に限って、画面の中のヘソンは、

零れんばかりの笑顔で、共演者に笑いかけている。




俺以外の奴に、笑いかけるな





ヘソンを見ていたいけれど、

他の奴に笑いかけるヘソンは、見たくない

モヤモヤと、黒い霧が立ちこめるように、

何かが心を覆っていく。



ヘソンの首筋に目をやる。

俺が付けた赤い所有印は、とうに消えているはすだった。









仕事から帰ってきたばかりの、ヘソンに 向かって、放り投げた小さな箱 。




「何?」

ヘソンが訊ねる




「ピアス、お前に似合いそうだったから 」





「エリク、もう穴、塞がってるよ 」





「あっ、そうか 」






「開けてやるよ」





「えっ?」

驚いているへソンを、そっと抱き締める。





「俺が、開けて、はめてやるよ」




小さく開いた唇に、啄むようにキスをした。





「お前は、俺のものだから、

誰にも触れさせない

誰にも傷つけさせない 」





へソンの耳にかかった髪をかきあげ、 耳朶に口づける。





「お前を、傷つけていいのは、俺だけだ」





「ピアスは、エリクのものだって、証になるの?」




「そう・・・だ」





首を傾げてヘソンが聞く。

そんな仕草の一つ一つが、可愛くて、

赤い小さな唇に、そっとキスをする。




証と言うよりも、枷なのかもしれない。

ヘソンが俺のそばから、離れないように、

どこにもいかないように、小さなそれで縛り付ける。






「いいよ」






「嫌だって、言えよ」







「じゃ、嫌だ。」






「嫌だって、言われてもやるよ 」





ヘソンがあきれ顔で見返している。





「どっちなんだよ 」






極端な照れ屋で、愛の言葉をめったに口にしない

ヘソンが、いつか言った

『エリクになら、何をされてもいい』

その言葉が、俺を甘く追いつめる。





俺がこの手で傷つけ、 枷(ピアス)をつける。





「お前が選べ」




「・・・?」




「痛い思いをするのは、お前だから」




「いいよ、俺はエリクのものだから 」




ヘソンが躊躇いもなく言う。



どうして、こんな時に限って、そんなに素直なんだよ











お前を傷つけようとしている俺を、簡単に許すな








2009年05月02日(Sat)
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