† sin4  (長篇小説)

□棘(いばら)の森
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【eric side】




ステージの上、ソロパートになって、

歌いだしたヘソンの隣に並び、肩に手を回す。




いつもなら、その手を跳ね除けるヘソンが、

なんのリアクションも、起こさない。






珍しいこともあるもんだ








ヘソンの肩を抱き、引き寄せた。

それでもヘソンは、されるままだ。








どうしたんだ?










顔を覗き込んだ。

ヘソンは俺の目をみると、

困ったような笑顔を見せた。

いつもと違うヘソンの様子を、

不思議に思った。






けれど、

これは、これで、嬉しいかも・・・・・

顔が自然に、ニヤけてくる。

調子に乗って、更にキツく引き寄せ、

耳元で言ってみる。










E「ヘソン、サランへ」

途端に、突き飛ばされた。











真っ赤になったヘソンを見て

笑いながら、その場を離れた。







どういう風の吹き回しか、しらないけど、

今日だけだろう

そう思っていた。







けれど、その日を境に、

ヘソンの態度が、穏やかに変化してきた。



自分からは、こないものの、

ステージの上で、

俺からのスキンシップを、拒むことが少なくなった。




楽屋での態度も、

よそよそしかった頃と比べると、

ぎこちなさが残るものの、

露骨に俺を避ける、

ということをしなくなった。





ヘソンに邪険にされるのが、当たり前で、

慣れていた俺は、

ヘソンの変化を、訝しく思いながらも、

嬉しく感じていた。








2009年01月22日(Thu)
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