† sin3 (長篇小説)
□お姫さま(へソン)を手に入れろ
1ページ/9ページ
(1)
夜更けに、インターホンの音がする。
[こんな時間に、誰だよ]
そう思いながら、ドアを開けたへソンは、
ドアの向こうに立っている、エリクを見て驚いた。
H「来るなら先に、電話くらいしろよ」
呆れたように言いながらも、エリクをリビングへ招き入れた。
E「ちゃんとリサーチ済みだ」
エリクが、飄々とした様子で答える。
H「相変わらずだな」
E「返事、聞かせろ」
前置きもなく、唐突にエリクが言った。
H「返事って?」
E「あの時の」
H「あの時?」
そう言ったきり、へソンが考え込む。
H「・ ・ ・ あっ」
ヘソンが思い出したように、声を上げた。
E「返事は?」
H「・・・・・・お前、あの時は、酔ってたし、
・・・・・・冗談だと、思ってた」
E「酔ってもいなかったし、冗談でもないよ」
H「・ ・ ・ ・」
E「3ヶ月待った」
いつになく真面目な顔で、エリクが言った。
H「・ ・ ・ 」
E「ヘソン」
H「・ ・ ・ エリク、
3ヶ月とかって、時間の問題じゃないんだ。
1年、2年かかるかもしれない。
でも必ず、お前に似合った女性が、現れるよ。」
E「俺はお前を愛してる。他の女とか、考えられない。」
H「お前は、俺のこと愛してないよ。」
E「どうして?」
H「俺のこと嫌いだった、だろ?」
E「嫌いだったことなんか、一度もない。」
H「そんなはずない。お前は俺のこと嫌ってた。
嫌いだった人間を、そんなに簡単に、愛せるものなのか?」
E「俺はずっと、お前を愛していたよ」
H「俺が気づいてない、って思ってたかも知れないけど、
お前は、俺のこと嫌ってたよ」
ヘソンは、そう言って自嘲気味に笑った。
E「何、言ってるんだ?
嫌ってたのは、お前のほうだろ?」
H「・ ・ ・ 」
ヘソンは、俯いて黙り込んだ。
E「お前が、俺のこと、嫌ってたんだろ」
ヘソンは、ただ唇をきつく噛み締める。
E「お前は、ジニのことが、大好きだもんな。
ひょっとして、あいつと寝てんの?」
H「えっ?」
E「いつも一緒に、寝てるもんな、抱かれてんの?」
ヘソンに、自分の気持ちが、伝わらないことに、
イラついた、エリクの口から、出た言葉だった。
ヘソンが、驚いて目を見張る。
H「・・・・・エリク、悪いけど帰って」
そう言ったその顔は、今にも泣き出しそうだった。
言い過ぎたかと思ったが、ジニとのことは、
ずっと、心のどこかで、引っかかっていた事だ、
今日じゃなくても、いつか聞いただろう。
エリクは、何も言わずに出て行った。
ヘソンはその場に、力が抜けたように座り込む。
エリクに、そんな風に思われていた事が、ショックだった。
2009/02/02[Mon]