† sin1 (短篇小説)
□月の下で香る花
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シャワーを浴びて出て来たヘソンが
ドアの前に立って、ベッドに座る俺をじっと見つめている
その瞳には、戸惑いの色が浮かんでいて
「エ・・・リク」
かすれたちいさな声で、そう名前を呼んだ。
「おいで」
そう言って、手を差し出すと
安心したように微笑んで
やっと、こっちへ向かって歩いてくる
いつまでたっても、抱かれることに慣れない、ヘソンの行動の一つ
そんなヘソンを怯えさせないように、そっと抱き寄せ、
そのままベッドに横たえる。
すぐに、脱がされる羽目になるのに、
毎回、きっちりパジャマを着込んでくる
それも、いつまでたっても、抱かれることに慣れない、ヘソンの行動の一つ
一度、その理由を、聞いてみたい気もするが、
恥ずかしがるヘソンを、脱がせるのも楽しいから
それは、聞かないでおこう
そんなことを考えながら、パジャマのボタンを外していく
白い首筋にキスをすると、ほんのりいい匂いがする
「ヘソン、いい匂い 」
反対側の首筋にもキスをする
花の香りがする
「えっ?そう」
ヘソンが手首を、クンクンと匂う
「しないよ?」
ヘソンが、首を傾げる
「するよ、バスジェル変えた?」
「何言ってんだ?エリクと同じだよ 」
「ふぅ〜ん、じゃシャンプー変えた?」
「それも、エリクと同じ
お前んちのシャワー使ったんだから、同じに決まってるだろ 」
半ば呆れたように、ヘソンが言う
首筋から胸元へ、唇を移動しても、
花の匂いは消えず、甘い香りが漂い続ける
ヘソンからは、いつもいい匂いがする
俺に抱かれる前は、いっそう甘い香りを放つ
ヘソンの全身に隈なく口づける
キスをするたびに、甘い香りに包まれて、花に酔いそうだ
花に抱かれ、果てる
月の雫を浴びて、俺だけの為に咲く花
月の下で香る花
2009/08/21[Fri]