† sin2 (短篇小説)
□ 枷 【痛みさえも】
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(hyesung side)
俺が帰って来るのを、待ちかねていたように、
やって来たエリクが、いきなり何かを、投げて寄こした。
「やるよ」
「何?」
エリクと手の中の小さな箱を、交互に見る
「ピアス、お前に似合いそうだったから 」
似合いそうと言われても、とうに穴は塞がっていて、
「エリク、もう穴、塞がってるよ 」
「あっ、そうか 」
俺のそばにやってきたエリクが、耳朶に触れる。
「開けてやるよ」
「えっ?」
エリクの長い腕が、俺を包み込む。
「俺が、開けて、はめてやるよ。」
そう言って、啄ばむようにキスをする。
「お前は、俺のものだから、
誰にも触れさせない。
誰にも傷つけさせない 」
エリクの綺麗な指が、耳に触れる。
耳にかかった髪をかきあげ、 耳朶に口づける。
「お前を、傷つけていいのは、俺だけだ」
「ピアスは、エリクのものだって、証になるの?」
「そう・・・だ」
エリクがまた、キスをする
「いいよ 」
「嫌だって、言えよ」
エリクが、苦笑いを浮かべる。
「じゃ、嫌だ。」
「嫌だって、言われてもやるよ 」
「どっちなんだよ 」
相変わらず、訳がわからない。
「お前が選べ」
「・・・?」
「痛い思いをするのは、お前だから」
仕事が忙しくて、逢えない日々が、続いた。
エリクは画面を通して、俺を見ることが多くなっていた。
たまに逢える日は、
片時も俺のそばから、離れようとしない
エリクの腕の中で一日中、過ごすようになっていた。
目に見える証なんてなくたって、
俺はお前のものなのに、
ピアス一つで、お前が安心するのなら、
「いいよ、俺はエリクのものだから 」
そう答えた俺に、エリクが微笑んだ。
笑っているけれど、
どこか悲しげな眼差しに、
心が痛んだ。
2009年05月01日(Fri)