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□サン
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「阿近くん見て見て。現世から持ってきた」
断る暇もなく満面の笑みで手を引かれて、困惑する。
怪我を見て以来、何故かよく話しかけられるようになった相手を見上げた。技術局では平、十二番隊では四席の位置にいる彼女。
手を引かれて着いた先は、隊舎の庭だった。そこに用意してあるものは。
「花火…?」
「そうそう。夏の風物詩。まだ今年はしてなくてさ。…誰かと一緒にしたくて」
テキパキと手持ち花火を握らされて、蝋燭で火を付けられる。我に返った瞬間、パチパチと綺麗な火花が散った。
「…初めて、した。文献で読んだことはあるけど…」
「…え…?」
目を見開いたあと、彼女が柔らかく笑んだのが、花火の光に照らし出される。
パチパチ、と光が散る。彼女が自身の持った花火に火を付ける。
「…きれい、」
「でしょ。…ふふ、今日は初花火記念日だね」
違う、あんたが。とは言えなかった。
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