Novel

□徒櫻
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 古来より、櫻の下(モト)には屍体が埋まっていると申します。




 例えば寒緋櫻の濃紅(コキクレナイ)。まるで血でも啜ったようだと思いませぬか? 櫻に限らず、屍体を埋めるには薔薇の下。そうそ、紫陽花の下に屍体を埋めると色が変わるからいけない、という話もございましたね。
 麗しい女人の本性には恐ろしき魔が潜むとも俗には申せましょう。美しの下に醜悪なるを連想するは、人の性(サガ)でございましょうか? ……ええ、美しいだけでは人の心を打たぬが故に、人は、花に屍体を連想するのやもしれませぬ。




 それとも、屍体を望みたるは花のほうでしょうか……?
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