「やぁ、姫君」
「…あれ、ヒノエ君?」
「どこかに行くのかい?なら俺も一緒に…」
「あ、ごめんね?敦盛さんと一緒に行くから!じゃあね」
「え!あ、ちょ…」
最近、姫君が俺を避けてる気がする。それもこれも。
・・・。
「姫君、今日は俺と…」
「ああ、ごめん。弁慶さんと約束があるから!」
俺が声を掛けては。
「姫君!今日こそは…」
「あ、影時さん〜!!」
他の野郎の名前を出してそっちに行ってしまう。最初は偶然?かと思ったが、何度も同じ目に遭えば明らかに故意だと思わざるえない。
(なんで俺だけ…何かしたか?)
不満と困惑。
さすがにここまで露骨だと、へこんでいつもの表情が崩れる。
「姫君!!」
「わわっ、何ヒノエ君?」
思わず姫君の腕を掴んで。逃げられないようにしてから意を決して聞いてみた。
「最近、俺だけを避けるのはなんでかな?」
考えても分からない。何かした覚えもない…はず。
「俺、何かした…?」
「ううん。何もしてないよ?」
(え?)
俺に非がある訳じゃないのか?少しだけ安堵はしたけれど、疑問は残る。
「なら、なんで…」
「ん?別に、何でもないよ?」
「でも、俺を避けて…」
「避けて無いよ?たまたまだよ、たまたま!!」
「…本当に?」
何だか腑に落ちない。
モヤモヤとした物が胸に残ったけれど、姫君が"気のせい"だと突き通すのでそう思う事にした。
「あ、今日は空いてるから。ヒノエ君、どっか一緒に行く?」
「え?本当かい!」
「うん」
久し振りの姫君との時間に顔が嬉しくて綻ぶ。そんな俺を見て姫君が怪しく笑った…ような気がした。
(バレなくて良かった。反応が面白くてヒノエ君をさり気なく苛めて楽しんでる…なんて言えないよね)(どうかしたかい?姫君)(うぅん。なんでもないよ(笑顔))