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□バイオハザードRE:4
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第5回「共闘! 寄生虫マニア」
(2023/4/18)

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強風に揺れる吊り橋が、レオンとアシュリーの重みで音を立てて軋む。
叩きつけるような雨が容赦なく降り続け、前を向く事も難しい。
嵐が吹き荒ぶ、不吉な闇夜である。

2人は村人に追われながら、救出ヘリが来るという山荘を訪れていた。
しかしこの悪天候では、ヘリなど着陸できそうにない。

偶然山荘に居合わせたルイスの機転でアシュリーをタンス裏の抜け道に逃がしたものの、村人達が山荘を目指して集結し、まさに籠城戦が始まろうとしていた。

「OK、ゲーム開始だ!」

わざと陽気な声をかけてくるルイスを横目に、レオンは黙々と窓に板を打ち付けていく。
前世の記憶で、ここが難所だとわかっているのである。

「へぇ、なんだか手慣れてるな? まあいいや、お揃いの銃持ってんだから仲良くやろうぜ」

ルイスは自分のレッド9を軽く持ち上げて見せると、手をひらひらと振った。
気さくというか、相変わらずノリが軽い。
そしてレオンがDIYを終わらせた頃、村人が少しずつ侵入し始めた。

「わかっていたが、狭くてやりづらいな!!」

村人と距離を取ろうとして、ドタバタと駆け回るレオン。
前世の記憶から、ルイスの事は寄生体製造機くらいに思っていた。
ルイスが撃った村人達から、レオンの知らぬ間に寄生体が発生するイメージが残っていたのだ。

しかし今回のルイスは、一味違っていた。


「ッ、早く撃たないと──!」

窓から侵入した村人に銃口を向けるレオン。
だが照準を合わせる前に銃声が響き、村人は突然うつぶせに倒れ込んだ。

「頼んだ!」

間髪入れずにルイスの声が響く。
ルイスによるアシストだったのだ。

レオンがすかさず村人にトドメを刺すと、次の瞬間にはルイスが別の村人の腕を撃ち抜いていた。

「You got this!(まかすぜ!)」

思わぬ援護に発奮したレオンは、村人の背中側へ回り込むと勢い良くジャーマンスープレックスを決めた。
(※実際の動画

それから感覚が冴えてきたレオンは数時間ぶりにパリィの存在を思い出し、ルイスの手助けもあって気持ち良く村人を葬っていった。
互いに声をかけあうようにもなり、連携が取れてきた雰囲気である。
(※奇跡的に調子良く倒せた時の動画ルイスによる救助シーン、あと日本語版のルイスの蹴り

ただ、レオンの集中力も限りがあり、次第に攻撃を食らうようになってしまった。
仕方無くレオンは、以前に狩ったクサリヘビを人目も憚らずに食べ始めた。

「クソッ、ヘビの皮が噛み切れん! 伝説の傭兵の歯どうなってんだ……」

ブツブツ言いながらヘビを食べ続けるレオン。
その様子を目撃したルイスは、驚きの余り大声を出していた。

「おいおいレオン! なんてもの食ってんだよ!?」

「なんだ、お前も半分食うか? 残念ながら食べやすくはないが……」

「そうじゃねぇよ! ヘビには顎口虫っていう寄生虫がいて、生食は命の危険があるんだ!」

たまたま村人の進攻がやや落ち着いていたため、ルイスはレオンの信じがたい行為を止めようと近づいてきた。

「あのな、顎口虫ってのは皮膚の下を這い回るだけで済めばまだマシ、運が悪けりゃ内臓や脳みそ、眼球にも侵入してくるんだ! そうはなりたくないだろ!?」

「さすが寄生虫博士だな……でももう遅いんだ。なんならブラックバスも生で食ってきたからな」

「それも顎口虫がいるんだよ!!!」

ルイスは正体がバレているのにも気づかないほど動揺していた。
この世にこんなヤツが存在したのかという顔をしている。

「まあ、その虫は帰国してから治療すればいいし……今はもっと大きな寄生虫の治療が先だからな」

「……え?」

ここでルイスはようやく訝しみ、一瞬様子を探るような目をした。
しかし再び村人の猛攻が始まり、疑念は立ち消えになってしまった。

それから村人が二階へも侵入してくるようになり、ついには牛男まで参戦。
狭すぎる屋内でのハンマー振り回しにブチ切れながら、レオンはライフルやマインスロアーで応戦していた。

「この牛野郎!!」

今回もさんざん頭を殴られ、怒り心頭のレオンがトドメのライフル射撃を決める。
すると倒れた牛男の懐から、輝く緑色の石が零れ落ちた。

「──エメラルドか!?」

すぐにでも拾いに行きたいレオンだったが、村人が邪魔でなかなか近づくことができない。
やっと回収できそうなタイミングが訪れた瞬間、予想外の声が響き渡った。

「こっちよ!」

抜け道から外に出たアシュリーが、逃走経路を確保して帰ってきたのである。

「よし、行こうぜレオン!」

「ちょっと待てルイス、床にエメラルドが……あーっ!!!」

無理矢理腕を掴まれて連行されたレオンは、エメラルドを拾うことができなかった。

(いや待てよ……前世だと、後から屋内のアイテムを回収できたよな!?)

一縷の望みを胸に抱いて走るレオンだったが、ある大事なことを忘れていた。

前世では村人が「バブルス……」などと言って自発的に退却していたが、今回はレオン達が山荘から逃げ出している……。
そして追撃を防ぐためにレオン達で門扉を閉じてしまったので、戻ることができなくなってしまったのだ!!

「うわ〜っ!! 俺のエメラルドが〜〜っ!!」

大地に膝と両手をついて慟哭するレオンを遠巻きに見つめるアシュリーとルイス。

「お嬢ちゃん……コイツいつもこんなんなのか?」

「お嬢ちゃんじゃなくてアシュリーよ……ずっと前からこうだったわ」

二人でひそひそ話しているのを横目で見ながら、レオンは決意していた。
時を巻き戻して、もう一度籠城戦をやり直すことを……!


そして何度も時を巻き戻した結果レオンは必勝パターンを編み出すことに成功した。
(※実は最初の籠城戦で何回か死んでる)


「ルイス、ちょっと一階見ててくれ!」

窓の板張りを終えたレオンは、勢い良く二階へ駆け上った。

「おいレオン、ズルいぜ! 一人だけ避難する気か!?」

「そんなんじゃない、すぐ戻る!」

レオンは二階を素早く見渡すと、その辺の物資を全て回収し始めた。混戦になる前に物色することで、弾薬に余裕を持たせようという魂胆である。

そして村人の侵入が始まり、銃での応戦が続いた。

「リロード中は気をつけろよ、レオン!」

「大丈夫だ、問題ない」

ルイスの注意喚起に対してレオンは自信ありげに答える。
それから狙いがつけやすいSG-09Rで撃ちまくり、敵に囲まれた状態で弾切れになったレオンは、秘策を繰り出した。

「リロードは後回しだ! レッド9を喰らえ!」

そう、無駄にハンドガンを二挺持ち歩いていたレオンは、装弾数無改造でも18発の連続射撃が可能なのである。
正直アタッシュケースの圧迫を考えるとどちらか処分した方が絶対に楽だが、今回だけは少し役に立ったのであった。

対処しきれない程に村人が密集してきた際には破片手榴弾やマインスロアーで対応し、三回のやり直しを経てようやくレオンはエメラルドを手に入れた。

「なんて美しい輝きなんだ……売ったらいくらになるんだろうな?」

「知らないわよ! あなたの懐が潤うだけじゃないの!?」

山荘から逃げ込んだ先で非常に上機嫌なレオンに、苛立ちを隠せないアシュリー。
レオンの機嫌が良い=調子に乗っていると、ロクなことにならないので警戒しているのだ。

「考えが甘いな……いいか? これを売った金で、俺が武器を改造する。すると戦闘で有利になり、俺と君が生き延びる確率が上がる」

「そういうのはちゃんと私のこと守ってから言ってよ……! うっ、ゲホッ! コホッ!!」

アシュリーはヒートアップしかけて、突然血を吐いた。

「ど、どうしたアシュリー!?」

興奮して大声を出したせいで喉が切れたと勘違いしたレオンが駆け寄ろうとするが、それを押し退けてルイスがアシュリーの肩を掴む。

「マズい……! 今までこんな風に血を吐いたことは!?」

それからルイスによる問診が始まり、結果的にレオンとアシュリーの体内にプラーガがいること、虫は外科手術で取り除けるという情報が判明した。

「俺もこうやって除去したんだ」

シャツの前をはだけて、胸元の手術痕を見せるルイス。
しかしそれを見たレオンは、前世の記憶との食い違いに戸惑いを隠せなかった。

「その……こんなこと聞くと怪しまれるかもしれないんだが……」

「ん?」

「レーザー光を利用した、傷痕の残らない手術装置とかは無いのか? ほら、アシュリーは女の子だろ。可哀想だと思ってな……」

「ああ、レーザーじゃねぇけど、それに近い装置なら……あ、いや、俺も詳しくはないぜ?」

お互いに隠し事をした二人が、次第に挙動不審になっていく。
結局グダグダのうちに探り合いは終了し、ルイスはこっそりエイダと密会するために立ち去ってしまった。
さらにハニガンからの無線でヘリ降下地点の変更が通達され、レオンとアシュリーは関所へ向かうことになった。


道中の小屋に武器商人がいたため、レオン達は雨宿りも兼ねて立ち寄っていくことにした。

「まずはナイフを修理してくれ」

「それだけでいいのか? へへっ、アンタからは、お宝を溜め込んでる匂いがするな……早いとこ俺達に売却して、得物を改造した方がいいと思うんだがなぁ?」

武器商人はコンバットナイフを受け取ると、刃先を研ぎながらセールストークを始めた。

「それとも美術品鑑賞が趣味で、手元に置いておきたいタイプか? ひひっ、お宝は命を救ってはくれないぜ、ストレンジャー?」

「……それもあるが、組み合わせボーナスのせいでずっと悩んでるんだ」

レオンは宝石を嵌め込むタイプのトレジャーを思い浮かべると、途方に暮れたような表情をした。

「宝石を同じ色で揃えたり、逆に三色ミックスしたりすれば、より高く買い取ってくれるんだろう? 
一番倍率が高い組み合わせで売りたいんだが、それなら全部の宝石を入手してからの方がいいんじゃないかと思ってな……」

「考えすぎは良くないぜ! 善は急げって言葉もある……ほら、修理完了だ」

武器商人がコンバットナイフを翳すと、刀身がギラリと鈍く光った。

「我ながらホント、見事な腕だぜ! さぁ、次のご注文は?」

「……いや、これだけで良い」

レオンはコンバットナイフを受け取ると、多数の宝石を所持したまま商談を打ち切った。
決心がつかなかったのだ。

さっさと武器を改造して欲しそうな武器商人とアシュリーの視線を背中に感じながら、レオンはタイプライターで記録をつけたのだった……。


(次回に続く!)
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