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□バイオハザードRE:4
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第2回「下を向いて歩こう」
(2023/3/26)

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寂しげな風が吹く曇り空の下、レオンは銃を構えていた。
目の前の風車に意識を集中するも、強烈な悪臭が鼻を突く。

肥溜めの上の謎の物体が気になっていたレオンは、農場を発つ前にもう一度確認に訪れていたのだった。

(こんなに大変な目に遭ってるんだ……せめて金銀財宝は全て回収したい)

特に何か案があるわけでもなかったが、レオンは偶然、謎の物体がぶら下がっている風車の羽が真横に来たタイミングで撃ち落とすことに成功した。
すると謎の物体は、上手い具合に肥溜めの外側に落下したのであった。

(これは……! 見覚えのある、真珠の首飾り!)

やはり肥溜めといえば真珠の首飾り。
真珠の首飾りといえば肥溜めである。

レオンはガッツポーズすると、意気揚々と農場を出発したのだった。


その後すぐ、レオンは明らかに怪しい崖の下で警戒を強めていた。

(そろそろ大岩が転がってくる頃か? 走る準備でもしておくか……)

前世で多くのレオン達を屠った大岩を思い出し、身震いするレオン。
しかし警戒度MAXのレオンを襲ったのは、大岩ではなく大量の土砂であった。

「何だと!?」

ほぼ真上から降り注ぐ土砂を避けるには、瞬時に後方へ退くしかない。
だがレオンは咄嗟に体が動かず、土砂が直撃して生き埋め寸前になってしまった。
(※一応しゃがみボタン表示が出るので、すぐに押せばバク転回避する)

即死こそしなかったものの、レオンは深手を負った状態での進軍を余儀無くされた。
そしてコウモリの飛び交うトンネルを抜けた先で、ついにその時は訪れた……。

ダイナマイト村人にペースを乱され、思うように動けないまま交戦を続けるレオン。
近くに投げ込まれたダイナマイトを咄嗟に避けようとした先で、レオンは村人に後ろから羽交い締めにされてしまった。

(クソッ、早く振りほどいて──!)

ナイフがあれば敵の首筋を刺して脱出するところだが、コンバットナイフ先生は村中央でボッキリ折れてそれっきりである。
そうやってもがくレオンの視界に飛び込んできたのは、農具のフォークの鋭い先端を真っ直ぐに向けて突っ込んで来る村人の姿であった。


──グシャッ!!


胸を貫かれたレオンの体が泥だらけの地面に崩れ落ち、トドメに首筋を上から刺し貫かれる。

村人による見事な連携プレーによって、レオンはこの村で初めての死を味わったのだった……。


トンネルを抜けた地点がコンティニューポイントになっていたため、死の直前の辺りで黄泉がえりを遂げたレオン。

「……俺はケーキじゃないんだがな」

胸と喉に穴が空いてないことを確認して、やれやれと首を振る。

それからダイナマイト村人にショットガンを撃って自爆したり、ゴールテープ式のダイナマイトトラップを華麗に破壊したりしながら周囲の村人を殲滅したレオンは、怪しい民家の中で、床に板切れを打ち付ける村人を発見していた。

特に問題なく倒して床を確認すると、そこにあったのは地下室への入口だった。

(……ハンサムなプーなら、タンスの中に押し込まれているはずでは?)

前世の記憶と違って首を傾げるレオンだが、とにかく行ってみないと始まらない。
暗い地下室を慎重に進んでいくと、ベージュの死体袋めいた何かがビクビクと跳ねていた。

「おい、ハンサムなプーじゃないか!」

レオンが袋のジッパーを開けると、思った通り、28才無職男性が詰め込まれていた。

「今、そのガムテープを外してやる!」

──ベリベリッ!

「痛っ!? おい、ブラジリアンワックスじゃないんだぞ!!」

容赦ない剥がしっぷりに呻くルイス。
そしてそれを見て、なぜか爆笑するレオン。

「あはは!! お前、ヒゲ濃くなったなぁ!!」

「うるせぇケツアゴ!!」

醜い争いが始まろうとしていたその時、闖入者が現れた。
相変わらずの巨躯を誇る、黒衣の大男──ビトレス・メンデス村長である!

ゲラゲラ笑っていたせいで反応が遅れたレオンは為す術なく村長に投げ飛ばされ、気絶している内にプラーガの幼生が透けて見える卵を首筋に注射されてしまったのだった。


廃工場で目覚めたレオンは、滑車を利用して手鎖でガナードの首を折るという離れ業を披露したものの、テカテカに光る革ジャケットを着たルイスに逃げられてしまった。
しかも装備を全て没収され、完全な素手である。

(廃工場にはブラックバスがいたはず……! このままじゃ漁ができないじゃないか!)

思わず舌打ちするレオンだったが、そこに救いの手が差し伸べられた。
その辺に、キッチンナイフが3本も落ちていたのである。

しかし、喜ぶのはまだ早かった。

なんとなくブラックバスがいそうな雰囲気の地下空間を発見したものの、降りられるハシゴがどこにもなかったのである!!

「ハッ、禁漁期ってか?」

露骨に不機嫌になったレオンは苛立ちのまま、村人の斧による斬撃をナイフで弾く能力を開花させた。
(※パリィ解禁)

「……それにしても、大きなネズミが多いな。まぁ、噛まないようだし、無益な殺生はやめておくか……」

ネズミを避けて歩きつつ、村人にスニークキルを決めて順調に出口へと進んでいく。
そして奪われた装備を回収していざ外に出ようという瞬間、懐かしさと安らぎを感じる紫色が扉の隙間から垣間見えた。

「ついてきな、ストレンジャー!」

「その声は武器商人じゃないか!!」

喜びを声に滲ませるレオンが、勢い良く扉を開ける。
するとファンタジックな紫色のトーチの横に、見慣れた姿が佇んでいた。

「ウェルカァアム! 青いメダリオンを壊してきてくれたようだな。これが報酬のスピネルだ」

「農場の貼り紙はアンタだったのか!」

「スピネルを集めれば、貴重品と交換してやろう。さぁ、次の依頼なんてどうだ?」

差し出されたチラシには、廃工場のネズミ駆除を求める文言が並んでいた。

「俺たちも感染症は怖くてな。報酬は勿論スピネルだ」

「乗った!!」

そして廃工場にとんぼ返りしたレオンは、ネズミへの情を一瞬で捨てて狩りを開始した。
現金なものである。

ネズミは近づき過ぎると動揺して逃げ回るものの、少し距離を置くとすぐ立ち止まるので、すぐに駆除を終えることができた。

そして追加のスピネルを手に入れたレオンは、宝の地図及び黄ハーブと交換してもらい、それから「今ならスコープがおまけでついてくるぜ!」と言うのでボルトアクションライフルも購入した。

「……武器商人、スコープの説明に書いてある『このチャプターのみ有効』ってなんだ? タダで貰ったスコープが後から回収されるのか?」

「そんなことはしないぜ! 今ライフルを買わないと、スコープは無料にならないってことだ!」

納得したレオンは、渓谷へと足を進めた。
(※当初回収されると勘違いしてました)

前世の記憶によれば、渓谷は最初にライフルが活躍する序盤の難所である。
ちなみにスコープはアタッシュケース内できちんとライフルに装着しないと使用できないので要注意だったりする。

特に面白味のある出来事は無かったものの、ライフルで事前に4人ほど敵の頭を撃ち抜き、それでも襲い来る大量の村人に何度も殺されながら、レオンは六角形のクレストを入手して武器商人の元へ舞い戻ってきた。

「聞いてくれ武器商人、3本もあったキッチンナイフが全部折れたんだ……」

「ヒッヒッヒ、ストレンジャー! ここではコンバットナイフを修復してやれるし、なんなら頑丈に強化することもできるぜ!」

「二度と折れないようにすることはできるのか?」

「ヒッヒッヒ、それはできん!」

「できないんかい!」

思わず渾身のツッコミを入れてしまったレオンだが、とにかくナイフは必需品である。
修復と強化で有り金をはたいてしまったレオンは、元気を失った様子でキーアイテムを嵌め込み、門扉の先へと進んでいった。
そして薄暗い林道に足を踏み入れたところで、ある設置物に既視感を覚えた。

真珠の首飾りが、蓋の上がった肥溜めの上にぶら下がっていたのである!

つっかえ棒を撃って肥溜めに蓋をすると、レオンはガッツポーズしながら真珠の首飾りを手に入れた。
足取りは軽く、もう何も怖くない……そう思われた。

だが、現実はそこまで甘くなかった。

トラバサミを一個発見し、ナイフで解除して先へ進むレオン──その前に立ち塞がったのは、ズタ袋を被ったチェーンソー男だった。

「お前の出番は、俺が村長の家を出てからだろう!?」

レオンは前世の記憶を元に必死に抗議するが、モーター音がうるさいのかチェーンソー男の耳には届かない。
テンパったレオンは足元の確認が疎かになり、二個目のトラバサミに足を挟まれている間に腹をチェーンソーで貫通&脳天をカチ割られて死んでしまったのだった……。


復活したレオンは、チェーンソー男に遭遇したら手前に引き返して戦うことにした。
これなら自分でトラバサミを踏むことは無いはずである。
そしていざ遭遇して実際に引き返してみると、面白い光景を見ることができた。

──チェーンソー男が、トラバサミに引っかかってジタバタしていたのである!!

「ははっ、俺に見惚れて、足元をよく見ないからだ!」

勢いがついたレオンは、ヘッドショットからのミドルキック連発でチェーンソー男を倒すことができた。

村長宅前の村人にも二連続でミドルキックをお見舞いし、思わず「おっと、足が滑った」などと言ってしまう有り様である。
(※これは本当にレオンが言った)

それから村長宅の勝手口から侵入したレオンは、前世と同じく、トイレで棒立ちになっているオッサンを見つけて懐かしい気持ちになっていた。

(変わらないものもある……)

感慨深くなりながらも情け容赦なくオッサンを撃ち殺したレオンは、トイレがぼっとん式なのを確認して再びしみじみしてしまったのだった。
リビングの玉暖簾は妙にジャパニーズ感があったものの、間取りもなんとなく懐かしさがある。

麦豚赤子のダイアル錠も無難に突破したレオンは、乱入してきたバーサーカー村人(※追記:トイレ村人が首折れ化か?)をショットガンで吹っ飛ばしつつ、水晶球の仕掛けを解いて村長の寝室へと突入した。
天蓋付きのベッドがあり、絨毯も豪華な雰囲気である。

「黒い帽子はハゲ隠しなんだろうな……この手記を読むに、悩みが多くて毛が抜けたんだろう」

失礼な事を呟きながら室内を物色するレオン。
しかしそこに本来の部屋の持ち主が帰ってきて、鉢合わせしてしまった。

「……誰がハゲだって?」

「ぐぇっ!!」

怒りのネック・ハンギング・ツリーを決められて、声も出なくなるレオン。
自業自得ではあるが、そこに窓から助太刀の発砲があった。
フックショットを使いこなしたエイダである。

「えっ、エイダ! チャイナドレスを着るのはやめたのか!?」

村長が手を離した瞬間、レオンは一瞬見えたエイダの足元に衝撃を受けて問いかけるも、答えは返ってこない。
村長は「ギフト」だの「血が混ざった」だの好き勝手言って立ち去ってしまい、レオンはただ一人寝室に残された。

『レオン、ルイスについての情報が入ったわ』

夕陽が差し込む室内で、ハニガンからの通信が入る。

「ロス・イルミナドス教団でプラーガの研究してたんだろ? 知ってるよ」

前世の記憶で投げやりに答えるレオンだったが、ハニガンの情報は予想を上回るものだった。

『じゃあ彼がアンブレラの元社員だったってことは?』

「えっ?」

『飛びきり優秀で、新薬の開発を任されてたそうよ』

「寄生虫の研究じゃなくて? アイツたしか寄生虫マニアだろう?」

『それは知らないけど、世に出回らないような薬を作ってたらしいわ。あと、フルネームはルイス・セラ・ナバロ』

「ナバロ!? セラはファミリーネームじゃなくてミドルネームだったのか!?」

『そうみたい。それじゃ、引き続き任務をよろしくね』

通信が切れた後も、レオンは衝撃でしばらく立ち尽くしていた。

それから呆然とした様子で寝室を出たレオンは、廊下のタイプライターで記録をつけたのだった……。


(次回に続く!)


※実際の通信だと、ルイスが元アンブレラだと発覚した瞬間にレオンが「アンブレラ……? 足くらい折っておけばよかったな」と言うので笑ってしまいました。
英語の台詞では
「I should've left him in that bag to rot.」と言ってて、訳すと「あの袋の中で腐らせとくべきだったな」みたいな意味になるので本当に容赦無い。
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