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□ゲームレビュー
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【OneShot】

可愛らしいネコのような姿をした主人公、ニコを導き、世界の滅亡を防ぐパズルアドベンチャーゲーム。
開発は「Future Cat」で、海外製のインディーゲームだが日本語にも対応している。
PC版はSteamで購入可能なほか、Nintendo Switch版もあるのでプレイしやすい。

登場人物がプレイヤーに直接語りかけてくるタイプのゲームが好きな人や、キービジュアルのニコに一目惚れした人におすすめ!

また余計なお世話だが、PC版を買うならマイドキュメントフォルダを事前に整理しておくと吉。
あんまり言うとネタバレになるけど、ゲーム進行に支障を来すからね……。


・ストーリー

目覚めると見知らぬ世界に来てしまっていた、主人公のニコ。
プレイヤーもまた別世界から現れた「神様」となり、「救世主」と呼ばれるニコを導かなくてはならない。
謎の四角形が大量に増殖し、この世界を蝕んでいるのだ。
そして正体不明の声がプレイヤーとニコに接触してくる。
この声の目的は何なのだろうか──?

また、電球のような「太陽」を運ぶ旅路の途中、ニコは持ち前の明るさで人々と仲良くなっていく。
この世界を救いたいという想いを深めるニコだが、最後に大きな決断がプレイヤーを待ち受けることになる──。


・良かった点

主人公の名前を入力するタイプのゲームだと恥ずかしくて本名を入れない派なのだが、今回ある理由で強制的にニコ(と他1名)にフルネームを呼ばれることになり、現実とゲームの境目が無くなるような没入感を得られた。
しかしこれについてはパソコン側の設定も関係してくるので、プレイヤーによっては共感を得られないかもしれない。

とりあえず確実に言えるのは「ニコが可愛い!!」ということである。
UI的な部分で不便を感じたこともあったが、ニコの可愛らしさで全て帳消しにできる。
可愛いは正義。

ニコは小さい子のような雰囲気なのだが、やっちゃいけないことの区別はついているし、責任感もある。
見知らぬ世界をたった一人で旅している時も、明るく素直な性格で人々のために頑張ろうとしている。
でも時折見せる幼い反応が、なんというかこう……この子は自分が守ってあげなきゃという気持ちにさせられる。

住人も基本的に優しくて良い人ばかりなので、人の暖かみを感じられるのもいい。
皆きちんとキャラが立っていて魅力的で、だからこそ余計に最後の選択で苦しむハメに……。

また、ドットで描かれた幻想的な風景も良い。
太陽が無いせいで全体的に鬱々としていて暗い景色が続くのだが、ぼんやりと輝く「蛍光体」と呼ばれるものが闇を照らしているため、儚い美しさがある。
他のゲームで例えるなら、UNDERTALEのウォーターフェルとか、ボイド・テラリウムのスクラップ場みたいな場所が好きな人なら気に入ると思う。

音楽も雰囲気にマッチしており、滅亡に向かう世界の空気がよく出ている。
ただし人によっては陰鬱で気が滅入ってくるかもしれない。
でもただ暗いBGMなのではなく、この世界には住人達がいて、生きるための営みがあるんだなというのが伝わってくる……くらいの活気はある。

パズル要素は、アイテムを組み合わせたり、スイッチを正しい順番で押したりするものが多い。
(あとは倉庫番やHelltakerみたいなのとか)
ちょっとわかりにくい部分もあったが、変な組み合わせをしてもニコが反応してくれることがあり、試行錯誤自体は結構楽しい。

また、パズルがゲームを飛び出すこともある。
困ったらとりあえずマイドキュメント。
ゲーム外の仕掛けが本当に素晴らしく、今までに無いゲーム体験をさせてくれた。
あのワクワクは忘れられない。


・悪かった点

ファストトラベルのエリア名がわかりにくい。
なんとなくはわかるものの、初めて来た土地でも特にエリア名なんか表示されないので、
「あの場所に戻りたいな……(メニュー開く)……えっ、『見晴らし台』ってどの辺のこと?」
という感じになっていた。
しかしよく迷子になっていたので、純粋に筆者が方向音痴なのかもしれない。

あとはそもそもニコの移動スピードがそんなに速くないのに、キーアイテムを持って各所を往復する事が多いので、せっかちな人には向かない……かも?

それとこのゲームはあくまでも「ニコはアプリケーション内で生きている」という前提で進むので、ゲーム終了に関する特殊演出が存在する。
それは別に構わないのだが、イベントシーン終了と同時にアプリケーションが終了した(※仕様)という事があり、異常終了したのかと思って焦ってしまった。
求めてるのはそういうドキドキじゃないんだよ……!

パズルはヒントが少なく、プレイヤーの閃きが求められる印象を受けた。
そのため思考が沼に陥るともう解けない。
最悪総当たりで行けるヤツもあるが……。
これについては悪いという程でもないのだが、とりあえずしんどかったのでこっちに載せた。
レンズ並べ替えの正解の理由が未だにわからない。

また、デスクトップをフル活用する仕掛けがあるのだが、プリントスクリーン保存しまくってたらちょっと調子が悪くなってしまった。
これもまぁ、自業自得かな……。


・ネタバレ有り感想








<1周目>

イベントアイテムを入手していても、メニュー画面から選択してニコが手に持っている状態じゃないと反応しない仕様なので、最初はちょっと躓いた。

……それにしてもいきなりPCのユーザー名で呼ばれたらビックリするよね!!?
こちとら本名使ってんだよ!!(半ギレ)

しかもあの天の声ポップアップ画面っていうかメッセージボックスで話しかけてくるから、Steamのスクショ機能では保存できなくてプリントスクリーンするしかないっていう……この……。

もともとUNDERTALEとか某文芸部みたいにプレイヤーに直接干渉してくるゲームを探しててOneshot見つけたからある程度は情報を得てたんだけど、いざ本名フルネーム呼びされると恥ずかしいようなむず痒いような気分になった。
匿名じゃなくて実名だと、なんか悪いことできないなって感じる……。
いやもしかして他の人はそうでもない?

それはさておきニコが信じられないほど良い子で、いきなり知らない世界に連れて来られたのに泣いたり怒ったりしないでベストを尽くそうとするの本当に偉いと思う。

あんなさぁ、小さい子(たぶん)がだよ?
プレイヤーのこと無条件で慕って頼りにしてくれるんだよ?
期待に応えなきゃって気持ちになるよね!
いきなり正面向かれて目が合うとビビるけど!

しかし実を言うと、不毛の地の雰囲気が暗すぎて初見プレイ時は気分が滅入った。
たくさんのエビが青白く光ってる水溜まりは銀河鉄道的な美しさがあって好きだったけど、そもそも崩壊寸前の世界だから全体的に暗いんだよな……。

でもNPCのデザインはどれも好き。
預言者ロボくんおめめ大きくて可愛いし手漕ぎボートのロボも素朴な顔してて好き。
シルバーお姉さんはダウナー系だけど見た目の雰囲気ちょっとアンダインに似てない?
赤毛で体格が良くて鎧みたいなの着てるからかな。

というか制御化って結局何なんだ……デトロイトビカムヒューマンの変異体みたいなもんなのか……?

あとプレス機でバールのようなものを作る時のニコがおっかなびっくりだったの可愛かったし、手順ミスって空きビンに直でエビ入れちゃった時もしっかりコメントあって良かった。

でもガスマスク無しで毒ガス地帯に行っちゃった時はニコが死んじゃうかと思って焦ったな……即死じゃなくて良かった……。

そういやどのタイミングか忘れたけど、ベッドで入眠→自然にゲーム終了じゃなくて、ウィンドウの×印で終了してからまた開いたら、ニコが「急に暗くなってすごく怖かった! 二度とこんなことしないで!」みたいなことを言ってて、あまりにも可哀想だったのでベッド入眠以外でゲーム終了するのはやめようと思った。
Steam版の前に公開されてたフリーゲーム版だと、同じことするとニコ死んでたらしいし……。

峡谷はなんかジブリ的な雰囲気で少しウキウキした。
カラムスとアルーラの兄妹も空気を明るくしてくれたし。
ってかアルーラちゃん可愛いすぎだろ天使かよ!
物々交換の兄ちゃんも明るい性格だったし、あの鳥っぽい人達基本的にあんな感じなんだろうか。

メイズさんには申し訳ないことをしてしまった……せっかく種イベントを最後の方まで進めたのに……(後述)

あと羊を押すHelltakerみたいなミニゲームは真面目に解こうとしたら結構時間かかってしまった。
しかし羊飼い怪しすぎて笑った。
一樹守みたいな雰囲気出しやがって……。

避難所はまたなんか暗い雰囲気だったけど、工事現場みたいな足場好きだからそこは良かった。
しかも修理屋さん面白かったし。

あのくたびれた感じとか、ツッコミのキレとか、情けない表情とか、全部好きなんだよね……。
確か家に日記があったような?
他にもなんかキーアイテムがあって「えっ、俺の家に入ったの? いや、役に立つものがあったならいいけど……」みたいな台詞が……あったような……?

他に印象的だったのは、パンケーキ焼こうかって聞いてくれるカフェの店員さん。
ヘーゼルナッツ入ってるのはニコのママ製だったか店員さんのやつだったか忘れたけど、きっと美味しいんだろうな〜
しかし自分も余裕無いだろうにみんな優しい……ささくれた心が癒されていく……。

そういや植木鉢の人がなんか大事なこと言ってた気がするけど忘れてしまった。
あと時計のお姉さん。

……あ、もしかしてこのゲーム、異形頭好きの人に勧めたらいいのか……?
サイコロ頭のお姉さんも面白かったし……。

セキュリティテストはもう全然わからなくて時間がかかった。
偶然クリアできたようなもんなので正直二度とやりたくない。
キップ・シルバーポイント博士はなんとなくフルネームで呼びたくなる。
シルバーお姉さんの産みの親にして同じ顔してるけど性格が朗らかで脳がバグる。

この辺はストーリー進行するための行動だけじゃなくて、メイズさんの種を発芽させるために寄り道しまくってたから非常に時間がかかった。
まぁ全部無駄になったんだけどな!!!(後述)

×印の塔は察しが悪くて最初全然意味がわからなかった。
ウインドウ閉じるのかよ!

exeファイルはスクショ撮りまくってたらウィンドウの挙動がおかしくなってクローバーマーク重ねるのに支障を来してしまい、ミス即やり直しの迷路を記憶を頼りに進む羽目になって異様に時間がかかった。
つらかった。

最後の選択はかなり迷ったけど「ニコの生存が第一優先だ!」と思って太陽を割った。
選択肢を動かす度にニコが不安そうに顔を向けるもんだから、ニコのためにも間違えられないというプレッシャーを感じたよね……。

選択そのものには後悔していないが、実は太陽を割るとメイズさんの種イベント全部無駄になる仕様だったので、心の中で泣いた。
あんなにうろうろして頑張ったのにぃ!!

ニコがウインドウを飛び出して画面外に去っていったのはすごくビックリした。
どういう技術!?
いりす症候群と同じ仕組みか!?

とりあえずニコが元気に故郷に帰れたようだったので安心した。
崩壊していく世界は……たぶん遅かれ早かれそうなったと思うので……。


<2周目>

1周目が綺麗に終わったので放置していたが、真ルート(Solsticeルート)のサントラを本編と同時購入していたため、「プレイしてないルートのサントラ聞くのもな……」ということで重い腰を上げた。
1周目は大体自力で頑張ったが、今回は攻略サイトをガン見してプレイ。

疲れちゃったんだ……行ったり来たりするのに……。

最初はそんなにしんどくなかったけど、ニコくんに「せっかく故郷に帰れたのにまた呼び戻された」というのがバレて信頼を失っていくのが辛すぎて心折れそうだった。
やさぐれていくニコくん……ごめん、ごめんよ……。

しかし新キャラである救世主ロボのプロトタイプ(主要キャラ)がまさかの皮肉屋ジト目単眼ロボで、自分には刺さらなかったけどコレは性癖破壊される人がいるんじゃないかなと思った。
急に出てきたわりにキャラ濃いぞコイツ!

それにしてもこのルート、1周目でニコを助けてくれた人達がみんな絶望的な展開に陥っていくのでプレイしていてかなり気が滅入った。

シルバーお姉さんはライガ・フウガ兄弟みたいになるし、メイズさんは橋を繋げるために息絶えるし、カラムスとアルーラを避難させられないまま四角形が増殖するし、修理屋さんはエレベーター内でパニック映画みたいな目に遭うし……。

あ、でも情けない雰囲気のお兄さんから「俺はいいから先に行け」みたいな台詞が出ると思ってなかったので、新しい一面が見れたのは嬉しかったかな……。

終盤セドリックとキツネさん(ルエ)が物語の核心に関わる大事な話をしていたけど、なんかちょっと頭に入って来なかった。

つまりそのう……このゲーム世界の創造主(とセドリック達)の元の世界も崩壊しかけていて、仮想現実世界(=ゲーム世界)に自らの分身を作って生き残ろうとしたけど、仮想現実世界を動かすAI(いつもの天の声、ワールドマシン)にバグがあって上手くいかず、ミラクルを起こす外的要因としてニコくんとプレイヤーを呼んだ……?

あ?何?
岩倉玲音みたいなことしようとした……ッてコト!?
は???

とりあえずニコくんを守ろうとしていたワールドマシンくんの気持ちは理解できた。
急になんか「同志よ……!」という感情が湧いてきたし、ワールドマシンには実体が無いのでニコくんの姿をメタモルフォーゼして現れた時には意外と感情豊かな表情(主に号泣)していて人間味があった。
今まで「なんだよコイツ!」とか思っててごめんね……。

最後のエンドロール演出は熱かった。
みんな無事に復活してホッとしたよ……!
世界を救えて、ニコくんも故郷に帰れて、失った信頼も取り戻せて、まさに大団円という感じだった。

いやぁ良かった〜〜!!



ーーーーー
以上、レビューでした。
ニコが「ミーは猫じゃない」って言ってたけど、一人称がミーなのネコチャンみたいで可愛いし天才的な翻訳だと思います。


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