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□FF15
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【忍殺語】「ウォー・アバウト・ベジタブル」【FF15】


(【これまでのあらすじ】イグニス・スキエンティアには悩みがあった。自らの作る料理……それも野菜料理に関する悩みが。無理にでも食べさせたい相手がいるのだ。既に彼のワザマエはタツジン級だったが、それでも悩みは尽きない。未来の王のライトハンドマンとして、越えねばならぬ試練がそこにあった)

(このSSはニンジャヘッズによるFF15ファンジン小説であり、イグニスのエピソードオーでのEXバトルを忍殺風文体で改変した内容です。ゲームと違う設定もあるが、ニンジャアトモスフィアを重点した結果なので実際問題ない。だがネタバレを気にする人は読んではいけない。いいね?)


その日は快晴だった。両目の突き出たシャークの名を冠した工場の前で、イグニスは決断的な表情で腕組みしている。彼は心に決めている事があった。それは他人から見れば些細な事であったが、彼の仕えるあるじには良い顔をされないと思われた。

「オハヨ、イグニス=サン。珍しいな、お前が手合わせなんて」イグニスのあるじ、ノクティスが歩いてくる。イグニスに呼び出されたのだ。ノクティスはファントム・ジツの使い手だが、他にも様々なジツを使いこなす油断ならない男である。だが、実際勝ち目がない訳ではない。ノクティスは若く、増長している。

「ドーモ」イグニスは強い意志を滲ませながらアイサツした。「この組み手でオレが勝ったら、野菜を食べてもらう。ゼンブだ」「ハァ!?野菜ナンデ!?」途端に剣呑アトモスフィアが漂う。野菜はノクティスにとって天敵めいた存在だった。嫌いなのだ。昔から。イグニスは刺すような殺気を感じた。

「ゼッタイ負けらんねェ」ノクティスはショートソードを召喚した。そして不可思議なジツによって、瞬時に姿を消したではないか!「覚悟はいいな」同時にイグニスも駆け出す。イクサはもう始まっているのだ!ユーレイめいた青い残像が消える前に、本人がイグニスのワン・インチ距離に現れ出た。シフト・ジツだ。

「イヤーッ!」「イヤーッ!」脳天に向かって降り下ろされたショートソードを、イグニスはクロスさせた両手のダガーで受け止めた。いくらジツが達者でも、ノクティスのカラテはまだ未熟である。イグニスがショートソードを弾き返すと、ノクティスはすかさずバックステップした。

その隙にイグニスは素早くジツを使う。「エレメント・ジツ!」イグニスのダガーが、超自然の炎を纏う!ジツによってエンハンスされ、カトン・ダガーとなったのだ!イグニスは燃え盛る両手をノクティスに向かって突き出す。

「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」ハヤイ!ダブル・カトン・ダガーが絶え間無くノクティスを襲う。だが手応えは無い。「イヤーッ!」ダガーの切っ先は幾つもの残像に吸い込まれていく。ノクティスがシフト・ジツで回避しているのだ。その動きは実際ダンスめいていた。

「イヤーッ!」不意に足を止めたノクティスが、振り向き様にショートソードの一撃を叩き込む!「イヤーッ!」イグニスはブリッジ回避!ブレイクダンスめいた動きで隙を消し、再びカトン・ダガーで斬りつける!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ノクティスがジツで避ける!

「イヤーッ!」斬りつける!「イヤーッ!」避ける!「イヤーッ!」斬りつける!「イヤーッ!」避ける!「イヤーッ!」斬りつける!「イヤーッ!」避ける!

このままオモチ製造工程めいたやり取りが永遠に続くのであろうか?否!永久機関は存在しない。平安時代の哲人剣士ミヤモト・マサシも「寝ずにイクサできるのはズンビーだけ」というコトワザを詠んでいる。シフト・ジツは確実にノクティスのカラテを消費していた。

「イヤッ……グワーッ!」均衡が崩れた!吹き飛ばされたノクティスに畳み掛けるべく、イグニスが勢い良く踏み込む。「イヤッ!イヤーッ!」やったか!?しかし……見よ!ノクティスは両手を顔の前で閉じてカトン・ダガーの攻撃をガードしている。古代ローマカラテ奥義「動かぬトータスの構え」だ!

「イヤーッ!」隙を見せればノクティスの反撃が飛んでくる。だがイグニスは怯まない。今が好機なのだ!「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」イグニスは燃えるコマめいて回転!ノクティスは次第に後退し始めた。ガードし続けるのにも限界が来たのか?

「イイイィーヤァアーッ!」イグニスは燃え盛る両手を天高く掲げ、降り下ろす!「グワーッ!」ホノオ!ノクティスはカトン・ダガーの炎圧で激しく吹き飛ばされた。イグニスはメガネをかけ直して着地点を確認する。しかしノクティスの姿は既に無い!

「スゥーッ、ハァーッ……!」上だ!ノクティスは残ったわずかなカラテでシフト・ジツを発動し、大きな看板に突き刺したショートソードに掴まっている。そしてこの特徴的な呼吸は……チャドー呼吸だ!回復力を限界まで高め、内なるカラテを再び練り上げる恐るべき呼吸法である。

だがイグニスもただ親鳥めいて見守っている訳ではない。「させるか!イヤーッ!」左腕にあるのは、ドウグ社のフックロープだ!イグニスはその強靭な鉤爪を、看板に向かって射出した。すると、おお……ブッダ!驚異的な巻き取り機構により、看板がバキバキと軋み始める。

「イヤーッ!」CRAAAASH!!フックロープが看板を引き剥がし、ノクティスは巨大な板の下敷きとなってコンクリートの地面に叩き付けられた。「アバーッ!」ナムサン!哀れな悲鳴が看板の下から漏れ聞こえる。何の訓練も受けていないモータルであれば、ここで死んでいただろう。

だが思い出して頂きたい。ノクティスは伝説のルシス・ニンジャの末裔である。これしきで倒れるようでは、憎きシガイ・ニンジャの王をスレイするのは夢のまた夢である。「ア……アバッ……!」タタミ20枚分はあろうかという鉄板の下から這い出てきたノクティスは、ただならぬ目付きでイグニスを睨んだ。

「メガネ、ブッ壊れても知らねェからな!」怒りでヘイキンテキを保てなくなったノクティスが一歩踏み出す。左手には禍々しいアトモスフィアを纏う一振りのカタナ。オヒガンより取り込んだ超常の力を宿す、13本のファントム・ソードのうちの1本である!

これらの武器はファントム・ジツの使い手にしか扱う事ができない。そしてジツを使えるのはルシス・ニンジャの血統を継ぐ者と、カン・ナギと呼ばれるミコー・プリエステスの一族のみである。13本の聖遺物は王のハカバなどに散在していたが、今では全てノクティスが所持していた。

だがイグニスとてまだジツを隠し持っている。「イヤーッ!エレメント・ジツ!」燃えていたはずのダガーが鋭く光り、刀身に稲妻を帯びる!デン・ダガーだ!イグニスはシフト・ジツと見紛うスピードで、瞬時にノクティスの目の前に到達!まだカタナを抜いてすらいないノクティスに向かって斬りつけた!

「イヤーッ!」「グワーッ!」勝負は決したのか!?だが次の瞬間、転がっていたのはイグニスの方だった。読者の中にニンジャ動体視力をお持ちの方がいれば、何が起きたかおわかりになっただろう。デン・ダガーが迫り来る間のわずかな時間に、ノクティスは抜刀し、軌道を読み、綺麗な一撃を放ったのだ!

イグニスとてイアイドーの恐ろしさは知っていたが、ここまで速いと思わなかったのだ。ウカツ!しかしそこで終わりではない。イグニスはウケミを取るとワーム・ムーブメントで追撃を躱し、ヤリを構えた。「ドラゴン!」ドラゴンナイト・クランの伝統的なカラテシャウトと共に、力強くヤリが飛んでいく!

「グワーッ!」油断して立ち尽くしていたノクティスにヤリが直撃!「ザンシンせよ!」イグニスが吼える。「ウッセェ!お前こそ足元すくわれンなよ!」ノクティスは怒鳴り返すとスリケンを投擲した。ヤバレカバレの反撃か!?イグニスを目掛け、三つのスリケンが連続して飛来!

ただのスリケンであれば、多少喰らってもダメージは些末であろう。だがこのスリケンも、ファントム・ソードの一本である。ノクティスの生体エネルギーを吸収し、威力に変換するヤミめいた神器。その威力は、いにしえのニンジャ六神大戦で使われた武器にも引けを取らない!

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」イグニスは連続バク転でスリケンを回避!だが攻撃はまだ終わっていない。スリケン投擲と共に地を蹴ったノクティスが、キリモミ回転しながら襲いかかる!「イィィヤァーッ!!」イグニスは側転回避を試みるが、間に合わない!「グワーッ!」ナムアミダブツ!

深刻なダメージを負って地面を転がるイグニスだが、追撃は来ない。ノクティスもまた無事ではないからだ。ファントム・ソードは使い手自身も尋常ならざるダメージを負う諸刃の剣。高速回転しながら多段ヒットによるポイント倍点を狙うのは、自らの命をも縮める所業に他ならない。

灼熱の日差しに炙られたアスファルトが、消耗しきった二人をジリジリと焦がす。先に立ち上がったのは……イグニスだ!「ヒーリング・アイテムは常に備えておくものだ。いつも言っていたはずだが」その手に握られているのは、神秘めいた緑色のボトル……ポーション・ドリンクだ!

「悪いがこれで終わらせてもらう!イヤーッ!」雷撃めいたデン・ダガーの急襲!立ち上がる事もままならぬノクティスは紙切れめいて宙を舞った。「グワーッ!」サツバツ!感電したノクティスはうつ伏せに痙攣している。すぐにトドメを刺せそうな状況だが、イグニスは注意深く観察し、動かぬ。


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