長編 2

□第四夜
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まだブツブツ言っている彼

仕方無く食べ途中だったサンドイッチを食べ出す




「シンヤ!!ヤベェぞ!!依頼の事がバレた!!今連絡が有って、ソイツ探して暴れ回ってるらしい!!」


顔面を真っ青に染め、部屋に飛び込んできた男が叫ぶ

唸っていた彼は顔を険しくする


「状況は?」

「とりあえず下の連中が食い止めてる……けど、それも多分もう持たねぇ…」



彼が静かに立ち上がった

「シンヤ…」

真剣な瞳をした彼と視線が絡み合う


「ミヤビ……俺と一緒に来い。アイツの傍に戻っても、ミヤビを不幸にするだけだ…」


スッと目の前に彼の手が差し出される
何時もの間延びした声とは想像も付かない固い声


「俺と来れば…苦労は多いかもしんねぇけど…きっと"自由"になれる…」



自由…
何度も夢見た
"あの頃"からの願い……




『ミヤビ…』

「!!!」

"自由"と言う言葉に彼の顔が浮かんだ

彼は自分の所有者で
もしかしたら
前の人達の様な事もするかもしれない



胸が
押し潰される様に苦しい…


「ミヤビッ!!」

痺れを切らした目の前の彼が再度自分を呼び掛け手を握り締めた


「一緒に……来てくれ…」



力強い手とは反対の弱々しい声の彼に、何故か自然に立ち上がった


"自由"になれると言われたからなのか


それとも


彼の顔が独りきりになった自分と重なったからなのか…


それは判らない





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