長編 2

□第三夜
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カチャリとドアの開く音に顔を向ける



ドア近くに佇むのは綺麗に染められた金髪に痛いほどに開けられたピアスが光っていた



確か彼は常連客の一人だった筈


ゆっくりと自分に近付いてくる彼は自分と同じ年代とは思えない程大人びている



「………」

「あの……」


いつも友達の様な仲間な様な人達と自分を組み敷く彼は今日は一人


しかしまだ"あの時間"より早い

戸惑って彼を見上げると勢い良く引かれる


「…っ?!!!」

力に逆らえず彼の胸に飛び込む形になり、息を詰まらせた


黒のVネックセーターの上から判る彼の均整に付いたしなやかな筋肉に、主張し過ぎない香水の匂いがした


久しぶりに嗅いだアレ以外の匂い


抱き止められている感覚に不安ばかりが募っていく
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