白い静寂

□白い静寂
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僕ははるばる、祖父母の暮らすこの北の国までやってきた。
すいた列車に揺られながら僕は窓の景色をみた。大地は真っ白な衣を纏い、緑という緑は死に耐えている。手帳を広げ、家族の写真を眺めるたび僕の心には見にくい心が芽生えていた。
写真には父と、幼い女の子が楽しそうに笑っていた。
そして、その隣には母と言うには若い女性。
この女性は、母さんが死んでからわずか数年で、我が家の主婦になった。
つまりは後妻。僕の継母だ。そして、今では娘の母親。
写真のなか、父にだかれてあどけなく笑うこの女の子は僕の腹違いの妹というわけだ。
この年末に僕一人でここに来たのは、家族旅行に参加したくなかったからだ。

母さんが生きているときから、父さんとあの継母は繋がっていた。
そして母さんはそれを知りながら、何も言わずに逝ってしまった。

僕が祖母を頼ってこの北の果てまで逃げて来たのは、そういう理由からだ。
父さんの裏切りを知ったのは去年。
それ以来、僕は父さんと継母と、異母妹と暮らすのが辛くなった。
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