☆矢文2
□闇に差す慈母の光
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深い闇に飲み込まれる。
人の気配と寝苦しさに目を覚ましたアイオリアは、ベッドの縁に座り自分を見つめるシャカの姿を確認する。
「シャカ…か?」
問い掛けに返事を返すかのように、シャカはアイオリアの頭を無言で撫でる。
シャカに撫でられ、少し落ち着きを見せるアイオリア。
明け方近いとはいえ、普段自分より早く行動しないシャカの訪問に疑問を抱き、訊ねた。
「何か用事でも…」
「君が呼んだから来たのだ」
アイオリアの問い掛けにそうシャカは答えた。
とはいえ、今まで寝ていたアイオリアはシャカを呼んだ覚えはない。
寝呆けて小宇宙で呼んだのかとの問いに、シャカは違うと。
「君が、闇に飲まれそうだったから」
シャカの言葉に先程まで見ていた夢を思い出す。
裏切り者の弟と言う事で苦汁を飲んでいた頃、真っ黒な暗闇に逆らうことも出来ず飲まれていくという悪夢を見ていた。
「だから私が来たのだ」
あの頃も悪夢を見るたびにシャカがアイオリアの傍に居てくれた。
そして、エメラルドグリーンの瞳で優しく見つめながら『大丈夫だ、私が傍にいるから』とアイオリアの頭を撫でてくれた。
アイオリアは撫でていたシャカの手を掴むと、自身の隣に引き寄せた。
「今から帰っても寒いだろ」
「素直に、寂しいから傍にいてくれと言ってはどうなのかね」
「言ったら朝まで居てくれるのか?」
アイオリアの言葉に、笑顔を向け答える。
「寂しがりやの仔猫の為に朝まで添い寝をしてあげよう」
【完】