□猫の僕と、犬の君
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【京子】という少女は、僕を手当てした後、温めたミルクを出したりタオルで寝床を作ったりしてくれた。
今僕は、お日様の匂いたっぷりのタオルに包まれじっとしている。

タオルの隙間から覗く、僕の頭を舐め続ける犬に、僕は疑問を投げ掛けた。

「何故僕を助けた」

飼い犬と野良猫、助ける義理はないはずだ。
僕の顔を思いっきり舐めた後、犬は意外そうに答えた。

「困っている奴を助けるのに理由がいるのか?」

率直な答えに返す言葉もなかった。
あの飼い主にこの飼い犬、多分これが普通なんだろうと解釈する。

あれから僕は成り行きで、ここの家の子になったのだが、今までの生活が変わるわけもなく、朝には並盛界隈を見回るため家をでる。
ただ違うことは夕方に迎えに来た了平と家路に着くという事。

「雲雀、一緒に帰るぞ!」
今日も僕の姿を見つけた了平が声をかける。
仲良く並んで歩く帰り道。
「本当は一目惚れだったのだ」

急に了平が僕に告白する。
あの出会いより前に了平は僕を知っていて、何とか話し掛けたいと思っていたらしいのだが、常に高い場所で更に風のように身軽に行動する為叶わなかったらしい。
そしてあの日、自分の視線の先にいた僕に気付き、声をかけたのだと。

「じゃあ、あの日僕が怪我をしていなかったら、こんな風に肩を並べることもなかったね」

「そうかもしれんが、あの日が駄目でも俺は諦めたりはしなかっただろう」

だから、最終的には両思いなのだと笑いながら吠えた。


【完】
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