□猫の僕と、犬の君
1ページ/2ページ

【猫の僕と、犬の君】

並盛界隈の頂点に君臨している僕にとって怖いものなどはない……だけど苦手なものがある。

それは人間の子供。

奴等は加減を知らないから、厄介なのである。
今日も見回りの最中偶々奴らに見つかり、逃げるまもなく尻尾を掴まれ、目一杯の包容と引っ張り合いに、何とか逃げ出したのだが、その際前足を痛めてしまったらしい。
僕は仕方がなく、公園のベンチの陰で一休みすることにした。

前足を舐めていた僕の前に、見慣れない一匹の犬が近付いてきた。

「どうしたのだ?」

見たことのない犬、多分飼い犬なのだろうこの僕に気軽に声をかけてくる様な命知らずの馬鹿は、この並盛には居ない筈だから。
飼い犬を相手にするのも面倒だと、問い掛けに対し前足を舐めながら、無視を決め込む。

暫く黙って見ていた犬が、のそりと動きだしたので、どこかに行くのかと思った瞬間、僕の首筋を甘噛みすると持ち上げる。

「ちょっと何するんだ!!」
僕の抵抗をものともせず、僕を加えたまま歩きだした。
連れていかれた場所はどこかの家の庭先、僕を優しく地面に下ろした犬は、一声吠える。

「極限帰ったのだ!!」

扉が開き、家の中から出てきたのは一人の少女、柔らかい笑顔で出迎える。
尻尾を目一杯振りながら、飼い主であろうその少女に向かい、犬は更に大声で吠える。

「怪我をしているみたいなのだ!」

僕の背中を舐めながら飼い主であろう少女に視線を向ける。
人間に伝わるわけ無いだろと、突っ込むより先に少女は笑顔で僕を抱き抱えた。
優しいいい匂いがする。

「手を怪我してるね、手当てしなきゃ」


まぐれだろうけど、伝わったらしい。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ