□愛情と創作料理
1ページ/1ページ


今俺は自室のベットの上にいる。
馬鹿は風邪を引かないと言う言葉通り、俺は風邪を引いたことはなかった…今迄は。
今の俺は熱も高く、食欲もない。
身体の節々が凄く痛み、起きているのも辛いぐらいだ。
心配をかけたくない俺は、誰にも連絡をしなかったのだが、どこで聞き付けたのか、雲雀が俺の部屋に尋ねてきて
「ふーん、馬鹿でも風邪引くんだ」
と一言。
弱り切った病人によく暴言を吐けるものだと…まあ、それでも心細かったので、雲雀の訪問に喜んだのだが…。


「僕が何か作ってあげるよ」
満面の笑みを浮かべ、雲雀その手には、スーパで買ったと思われる食材が入った袋が握られていた。


おとなしく寝ていろと言われ、横になってはいるものの、料理をしているというか、何と格闘しているのだ?と言うような破壊音が、隣の台所から聞こえてくる。

『俺は何を食べさせられるのだ?』
不安は募る一方だった。


小一時間経過しただろうか、雲雀が持ってきたのはお粥(みたいな)ものだった。
所々焦げていたり、お米の原形を残さないぐらいにどろどろになってはいるが、まあ、大丈夫だろうと判断した俺は一口。

「…雲雀」
「何?」
「このお粥、何で炊いたのだ?」
口に入れた瞬間に広がる、梅干しとは違う酸味に恐怖を覚え聞いてみる。
「風邪にはビタミンかなって、だから檸檬汁で炊いてみた」

眩暈を感じた俺は箸を置く。
お粥擬きを眺めながらふと『雲雀が持っていたスーパの袋からは、白葱が覗いていたはずだが?』ということに気付く。
目の前のお粥には葱らしきものが見当たらない。

「雲雀、葱は入れなかったのか?」
この質問をしたことを、この後、後悔することになろうとは、この時の俺は微塵にも感じていなかった。

「葱は食べるために買ったんじゃないよ」
「では何に?」
「熱を下げるのに葱を使うって聞いたから、試してみようと思って」

背中に冷たいものが落ちるのを感じた。

「つまり、その葱を…」
「そう、了平のお尻に」
いつの間にか手にしていた葱を俺に向け、パジャマのズボンに手を掛ける。

「まっ、待て雲雀!熱は下がった!!」
「こんなに熱いのに、下がってるわけないだろ!」

暫らくの押し問答の末、明日熱が下がってなかったら葱を入れる、と言うことになり、俺は極限パワーで何とか熱を下げたのだった。

次の日の朝、俺が台所で見たものは、鍋一杯に作られたお粥(みたいなもの)だった。
【完】

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ