□思い
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長い長い戦いの日々が終わり、久しぶりに雲雀の屋敷で二人きり、酒を酌み交わしていた。
いつもと変わらない雲雀の姿、だが微妙な変化に俺は気付いていた。


「了平、言いたいことがあるなら言いなよ」

無言で見つめる俺に、雲雀が言った。
「…トゲトゲが居なくなって寂しいのか?」
俺の言葉に、雲雀は持っていた猪口を置き、俺を見つめながら問う。
「何でそう思うの」
「ただ、なんとなくだな」
「確かに気に入ってはいたけど、そこまで執着があったわけではないよ」
視線を少し下げ、雲雀は笑う。
他の奴には分からないだろう、雲雀に一番近い場所で見ていた俺だから分かる微妙な感情。

「大丈夫だ!俺はお前の傍から離れたりはせん!!」

俺の告白に、一瞬驚いた表情を見せたが雲雀は笑いながら言った。
「当たり前だよ、君は僕のものだからね。離れたくても離さないよ」






雲雀が、何かを思い出したかのように席を外すと、部屋の奥から何かを持ってきた。
奥の部屋の引き出しから取り出してきたものを、まじまじと見つめ、背中に冷や汗を感じながら聞いてみた。
「雲雀…それは?」
「これ?首輪」
更に雲雀は、言葉を続ける。
「君は僕のものだからね、放し飼いしてて、急に居なくなっても困るから」
「…」
俺はペットではない!と叫びたいのだが、雲雀が寂しさを紛らわせるならと、黙って笑った。

【完】

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