□ハッピー?バレンタイン
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去年のバレンタイン。

「…誰から貰ったの」
「クラスの女子からだが」
「ふーん」
そのやり取りの後、雲雀は暫らく口をきいてくれなかった。
雲雀が嫉妬してくれたことは嬉しかったが、口をきいてくれなかったのは、かなり堪えたので今年は
「雲雀からチョコが欲しいのだ!」
とお願いをしてみた。
「やだ」
予想どおりの返答だったが、ここで引き下がる俺ではない。
「板チョコで良いのだ、お前からのチョコが欲しいだけなのだ!」
俺の懇願に雲雀が負け、チョコをくれると約束してくれたのだが、まさかそれがあんなことになるとは、この時の俺は全然予想してなかった。


2月14日バレンタインデー。
教室や廊下などで繰り広げられているイベントを横目に、逸る気持ちを押さえつつ応接室に向かった俺に、雲雀は袋を差しだした。
中には入っていたのは、歪な形をしたチョコ。
「雲雀…これは?」
「僕が作ったんだよ」
顔を背けながら話す雲雀の顔は、真っ赤に染まっている。
「食べてもいいか?」
「勝手に食べればいいだろ」
形は歪だが、雲雀が俺の為に手作りチョコを作ってくれた事が、極限に嬉しい。
一口噛ったチョコから不思議な味がする。
酸っぱい。
チョコを見ると、何か赤いものが見える。
「中に何か入れたのか?赤いものが…」
「それ、梅干し」
口の中には、更に違う味が広がる。
辛い。
「否、唐辛子かな」
普通チョコにそんなもの入れるのか?
雲雀に真意を聞くと、返ってきた答えは
「君の健康を考えて、体に良さそうなものを入れてみたんだけど」
と言うことだった。

「君の為に頑張ったんだ」
雲雀にそんな事を言われ、残すわけにもいかず、チョコを完食したその晩、俺は謎の腹痛と格闘した。
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