□夢の話
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教会の鐘の音が鳴り響く中、ヴァージンロードの先には、白いウエディングドレスを身に纏った女性が待つ。
「 」
俺が名を呼ぶと、その人は振り返り微笑む。
真っ白い服に黒髪が映え、真っ赤な唇が妖艶に写る


今朝見た夢の話。

昨日の夕方、京子が雑誌を見ながら
『ウエディングドレス綺麗だよね』
と三浦と二人、話していた事が、こんな夢を見た原因だと思われる。
『お兄さん、京子ちゃんが結婚したら泣きそうですね』
とも言われた…男がそんな事では泣かんぞ!
ともかく、夢の事など忘れていた俺は、いつもと変わらない時間を過ごしていた。
放課後の部活中、ふと見上げると、雲雀が窓辺に立ち、こちらを見ている事に気付いた。
その時、突然風が吹き、窓辺に立つ雲雀に、白いカーテンがヴェールの様に頭に覆いかぶさるのが見えた。
「!?」
曖昧な記憶が鮮明に思い起こされる。

今朝見た夢の中。
ウエディングドレスを身に纏い、十字架の前で佇む人に向かい『雲雀』と俺は名を呼んだ、振り向いたのは確かに雲雀本人。
微笑みながら俺に手を差し伸べ…
「!!」
そうだ、あの夢の中の人物は、女性ではなく雲雀だった。
白い花飾りを頭に付け、その隙間から覗く黒い瞳、真っ赤な唇が動き俺の名を呼ぶ…全てを思い出し、なんだか恥ずかしくなった。



部活終了後、一緒に帰るため、雲雀の居る応接室へと向かった俺は、夢の話を雲雀に全て話した。
「極限に、綺麗だったのだ」
話し終え、最後にぼそりと呟く。
「…」
てっきり雲雀の事だから、『何で僕がウエディングドレスなんて着ないといけないの?』と怒られると思っていた…ら、
「妹が結婚したら、了平大泣きしそうだよね」
と笑いながら言った。


えっ、突っ込むところはそこなのか!?

【完】

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