□錫婚式
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中学三年。

あれは付き合い初めて一年目のこと。
「雲雀、受け取ってくれ!!」
大声で、押しつけるように手紙を突然渡された。
並中の便箋に、芸術といわしめるような、汚い字で
『極限愛してる!』
と書かれたそれを受け取った僕は、了平に真意を聞いた。
「これはなんて意味?」
了平に内容が見えるよう、手紙の端を掴み揺らす。
それに対する了平の答えは「それはだな、俺と雲雀が付き合い初めて一年目だからだ!!」
と、言った。
「…一年目?」
だから何?よくわからない…ので、更に話を進めると、
一年目は紙婚式。
十年目は錫婚式。
二十五年銀婚式。
だと、了平は嬉しそうに語る。
どうやら昨晩、家族団欒の席でそのような話がされたらしい。
了平それ悪いけど、違うから。
そのイベントは、結婚した夫婦の記念日のことだから。僕達は恋人だけど、男同士、どうあがいても結婚なんて出来ないから。
言葉もなく立ち尽くす僕の横で、了平は両腕を振り上げ、
「次は錫婚式だ!しっかり働いて、次こそはちゃんとしたプレゼントを渡すからな!!」
と嬉しい告白をしてくれている。
まあいいか…。
了平から愛の言葉を綴った手紙を貰って、嬉しかったのと、極限馬鹿だから次なんて忘れるだろうと、その時、ついつい間違いを指摘しなかった。
それが十年前の話。
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