文
□初恋
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「僕の笹川」
なんでそう言ったのか、最初はわからなかった。
この感情は、今まで生きてきた僕の中で無かったものだったから……でも…。
携帯から伝えられた言葉が、僕の心を乱した。
「笹川了平……やられたよ」
草食動物にそう伝えるのも、もどかしく感じた。
その後、病院のベッドで彼の体から伸びる複数の白い管を眺めながら、口に付いて出た言葉が
「僕の笹川に…」って。
怒りのままに、この事件の首謀者を捜し当て、襲撃したまでは良かったが、桜を前にして、捕われた。
一人でじっとしている時も頭の中には、笹川了平の事ばかり考えていた。
何故、笹川了平の事が気に掛かるのか、よく考えて導きだされた答えは、僕は笹川了平が好きなのだという事。
ありえないと。僕よりも弱く、いつも弱い草食動物達と群れている、あの男の事が…。
意識を取り戻した僕は、病院のベッドの上にいた。
事件は終わったと赤ん坊に告げられ、僕の手で片付けられなかった事に怒りはあったものの、僕は心の刺が抜けた感じに、少しすっきりしている。
【笹川了平の事が好き】
だからといって、僕から告白をするつもりはないよ。
だって、僕のプライドがそんな事許さない。
それに、僕の事を【友達】としてしか見てない、あの能天気なボクシング馬鹿には、僕のこの気持ちは多分、一生届かないだろう。
それでも構わないと思ってた……けど、
「俺は雲雀が好きだ!」
と笹川から告白を受け、晴れて恋人同士になるのは、これから数日後の事である
【完】