□この仔猫の仔
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いつものジョギングコースの途中にある公園
いつもの了平なら、何事もなく通り過ぎるのだが、
今日は何故か、公園内に足を踏み入れ
ベンチに座って遠くを見ていた
「にゃーん」
声がするので目線を足元に送ると、真っ黒い仔猫が足に尻尾を絡めていた
「ん?猫…か」
手を伸ばし頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細め、喉をゴロゴロいわせている
その小さい体を抱え上げ、自分の膝の上に乗せると
真ん丸い目が自分を見つめ、可愛い声で鳴きながら頭を擦り付けてくる
「雲雀みたいだな」
頭を撫でながらふと思う
二人きりで居るとき、普段の雲雀からは想像出来ないぐらい、甘えてくる事がある
そんな時、そっと髪を撫でてやると、目を細めながらも、されるがままになる
そんなことを思い出していたら、仔猫が急に膝から降り帰りはじめる
「なんだ、もう帰るのか」
何の執着も見せないまま、振り返る事もなく草群へと消えていく
「雲雀は猫と同じだな」
雲雀も甘えたかと思えば、急に興味が失せたように、冷たくなるときがある
仔猫と雲雀が重なって見える

『今から、雲雀の家に行ったらあの猫のように、俺に甘えてくれるだろうか?』

暫らく考えていたが
「よし!予定変更だ、雲雀の家に行くぞ!!」
夜の風を浴び、そう叫ぶと走りだした

【完】

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