□七夕
1ページ/1ページ

「素麺か、食べるのは久しぶりだな。」
一ヵ月に及ぶ海外での仕事を終え、日本に戻った了平は嬉しそうに話す。
「今日は七夕だからって、哲が言ってたからね。」
了平は首を傾げながら、
「七夕だと、素麺を食べるのか?」
と、不思議そうに聞いてくる。
「確か、天の川に見立てて、とか言ってたけど?」
なるほどなと、感心しながら素麺を食べ始める。
「七夕か。そういえば昔、京子がまだ小さい頃、"雨が降ったら二人が逢えないから。"と言って、てるてる坊主をつくっておったなぁ。」
顔を綻ばせながら語る。
織姫と彦星の昔話。
一年に一回だけ、天の川にかかる橋を越え、二人は逢うことが出来る。しかも晴れ限定。雨が降ったら逢えないらしい。
了平の顔を見ながら、少しだけ、意地悪をしてみたくなった。
「了平。もし僕達が、一年に一回しか逢えなくなったらどうする?」
今回は一ヵ月逢えないだけだったけど、一年に一回。そうなったら了平はどうするのだろうか。
考え込んでいた了平は、真面目な顔で、
「この一ヵ月逢えないだけでも辛かったのに、一年逢えないなんて、俺は耐えられん!」
了平の告白に、嬉しくて涙が出そうになる。
そっと、僕の肩に手を回して抱き締めた了平が、耳元で、
「俺は絶対お前を一人にはしない!何があっても一生一緒だ。」
多分、了平の言葉は偽りなどないだろう。
始めて会ってから十数年、昔と変わらない、晴れの笑顔で僕を包んでくれている。"一生"と言う言葉、無理かもしれないけど、君なら叶えてしまうかもね。
僕も了平の肩に手を回して囁く

「僕は、一生君を離さないからね。覚悟してよ。」
「極限わかったぞ!!」

この晩は、この一ヵ月分を取り戻すかのように、互いに求めあったんだけど。
「ちょっと!あのオカマと一ヵ月一緒だったの?」
「ああ、言っておらんかったか?」
「一言も聞いてないよ!君、あのオカマに何かされてないでしょうね!!」
「何をされるのだ、何を!?」
了平が一ヵ月間、オカマと一緒に仕事をしていた事で、雲雀に怒られるのは、次の日の話である。                 【完】
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ