□涙の訳
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「今年は雲雀を騙そうと思うのだ!」

了平の告白に、その場に居た上司と同僚は『わざわざ言わなきゃ良いのに』と思った。
了平本人は全く気付いていないが、超高性能防犯カメラが随時配備されている…並盛印ヒバードが。
今この告白の間も、窓の近くを飛び回っているのが確認できる、多分全部雲雀には筒抜けだろう。

「で、どんな嘘を吐くんだよ」

「よく聞いてくれたタコヘッド!雲雀に『別れよう』って言うのだ」

「お兄さんそれは……」

嘘とはいえそれはマズイのではと綱吉は思った。
了平大好き雲雀の事、絶対に別れる事はない、となれば血の雨が降る事が予想できるからだ。

詳しく聞いてみると了平曰く、雲雀に『別れよう』と言うと雲雀が怒ってバトルが始まる、バトル終盤に種明かしでラブラブと言う計画らしい。

『そう上手くいかないだろうな』

皆同じ意見だが決して口には出さない、了平に付いている超高性能カメラの持ち主の報復が怖いからだ。

ネタばらしをし、意気揚揚と帰る了平を見送りながら、これから起きるであろう出来事を超直感で予想してため息を吐く綱吉だった。




当日。

そわそわしながらも作戦決行。


「雲雀、話がある」

「何?」

朝食を支度していた雲雀は振り向いた。
笑いそうになるのを堪えながら、真面目な表情で言葉を告げる。

「別れてほしい」

了平の告白に雲雀は顔を背ける、肩が小刻みに震えているのが見て取れる。

『さあ雲雀かかってこい!』
身構える了平を余所に雲雀の腕が顔を拭う。
予想外の展開に戸惑う了平、振り向いた雲雀の目尻には雫が。

雲雀が泣いているとわかった了平は咄嗟に雲雀に近づき抱きしめ、四月馬鹿のイベントをしただけで全て嘘だと釈明を。

了平の腕の中で震えていた雲雀が顔を上げ一言。

「別れようって言われても僕は離さないけどね」

不適な笑みを浮かべ話す雲雀の手の中には目薬が一つ。

ここで自分が騙された事に気付いた了平だったがほっと胸を撫で下ろす。
本気で雲雀を泣かせたわけではなかったから、雲雀の涙を見るのは胸が締め付けられたから。

「雲雀すまなかった」

「いいよ、けどもう少しましな嘘にしてよね」

【完】

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