□月と兎
1ページ/1ページ


お団子を片手に僕の部屋にやってきた了平は、双眼鏡で月を見ている。
月なんか見て何が楽しいのかと思っていたら、了平が可愛い事を言い始めた。

「月には兎が居るらしいのだ!!」

と。
どうやら妹達が了平にそんな話をしたらしいのだが、よくよく聞いてみると何処か話がおかしい。

「京子が月を見て『兎が見えるね』といっておったのだ。視力が下がった訳ではないはずだが、俺には見えなかったのだ」

確か月の模様が兎の餅つきに見えるとかあったっけ、だけど了平は本当に月には兎が居ると勘違いをしているらしい。
可愛いなぁなんて考えていたら、ふと苛めたくなった。

「本当だ、兎が見えるね」

「何!?雲雀にも見えるのか、何処に居るのだ!!」

月を見上げそう呟く僕の言葉に了平が焦り、必死に兎を探し始める。
その姿が可愛いからもう暫くは黙っておこうかな。




【完】

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ