□鬼ごっこ
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街中に、大小様々な鯉のぼりが風を受け大空をたなびく中、並盛の町内を所狭しと鬼ごっこが繰り広げられている。
少し違うところは、鬼(1人)vs多数ではなく、鬼(風紀委員全員)vs笹川了平と言う少し変わった構図である。

なぜこのような鬼ごっこが行われているかというと、事の始まりは5月5日の雲雀の誕生日である今日、GWお構いなしに何時ものように応接室に来ていた雲雀に『委員長お誕生日おめでとうございます』と草壁が言ったことから始まる。

何時もなら無言で終わるのだが、今年は違った。

「草壁、プレゼントは笹川了平でいいから」

と一言。
普通なら狼狽える予想外の展開に思考が停止するだろうが、そこは草壁さらりと返す。

「笹川了平を連れてくればよろしいのですね」

「そう、午後5時迄にね」

返事を聞く前に携帯を操作し始める草壁に、雲雀はさらに一言付け加える。

「リボンは赤で良いから」




雲雀の一言で、風紀委員達は赤いリボン片手に鬼ごっこをしているのだが、当の笹川了平は鬼ごっこという状況を楽しんでいるので話し合いも不可能、中々捕まえる事が出来ないままに残り数分。

風紀委員達の努力も虚しく時間終了!!


午後5時ジャストに携帯で状況確認し、溜め息をつきながら雲雀に報告。

「委員長申し訳ありません」

「弱いね」

普段ならどす黒いオーラを出しながら鉄槌が食らわされる所なのだが、草壁の報告を聞きながらも穏やかな雲雀。

そんな会話をしている最中、廊下を走る音が聞こえたかと思ったらノックも無しにドアが開かれ、嬉しそうな表情をの笹川了平が大声で叫ぶ。

「雲雀俺の勝ちだな!」

「そうだね」

見た目こそは変わらないが何だか楽しそうな雲雀は言葉を返す。

どういう事なのか詳しく話を聞いてみると、了平が雲雀の誕生日会を計画していたのだが、群れるのが嫌な雲雀はそれを拒否、それでも食い下がる了平に雲雀は『風紀委員達から逃げ切れたら参加しても良いよ』と約束したらしい。

「京子がお前の好きなハンバーグを作って待ってるぞ」

と雲雀の手を握る。
それを嫌がる訳でもなく、素直に聞く雲雀の姿を見た草壁には楽しそうに見えたのだった。

「草壁も来るか」

「いえ、私はまだやる事がありますので」

並盛で行われた鬼ごっこの後始末をしなければならないので、笹川了平の誘いをさらりと断る草壁を余所に、仲良く手を繋いで帰っていく二人。
そんな二人の後ろ姿を応接室の窓から眺めながら草壁は顔が緩む。

「昔の委員長ならこんな回りくどい事はしなかったはず」

笹川了平の傍で、少しずつ変わっていく委員長の姿を見るのが楽しみな草壁だった。


【完】

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