☆矢文.

□四月馬鹿と天然
1ページ/1ページ


麗らかな聖域の朝。

「カノンおはよう、もう少しだから顔を洗ってきなさい」

「サガ支度は後でいいから俺の話を聞け」

カノンは朝食の支度をしていたサガに対して、無理矢理椅子に座るよう促す。
文句の一つでも言おうと振り向いたサガだったが、カノンのいつにもなく真剣で真面目な表情に大人しく椅子に座り言葉を待つ。

「サガ、今日は女神の育った国で【エイプリルフール】と言うイベントが行われる日らしい。だからエロ射手座の言うことは一日受け流せ、いいな」

「カノン、アイオロスの事をその様な名称で呼ばない!彼は次期教皇なのだ、それとエイプリルフール?それはどの様なイベントなのだ」

「詳しくは知らなくていい、取り敢えず今日1日射手座の言う事は適当に受け流せ、いいな」

「良くは分からないが、わかった」

サガ大好きアイオロスの事、絶対にイベントに託けてサガに色々仕掛けてくる事が目に見えて分かっていたカノンは、先手必勝とばかりにサガに忠告する。
あまりよく分かっていないサガは、ただ頷くだけだった。




いつもと変わらない日常は続き、教皇の応接室では何ら変わったこともなく、順調に仕事が片付けられていく。
お昼にはサガが作った弁当を美味しそうにアイオロスが頬張りその傍らではその姿を楽しそうに見つめるサガの姿があった。

「サガ、美味しいよ」

「そうか、なら良かった」

「お嫁さんにおいで、幸せにするから」

ここで何時もなら『何馬鹿な事言っている!』と真っ赤に染まったサガの否定の言葉と共にアイオロスが殴られるといった事が起るのだが今日に限って『そうだな』とサガが答えたのだった。
サガは、朝カノンに言われた事を守っていただけなのだが、アイオロスはサガがプロポーズを受けたと勘違いして暴走。


『俺サガと結婚するから!』

聖域中、小宇宙を使って皆に報告。
それを聞いたカノンが怒りの形相で応接室に殴り込みをかけに突入するも、『エイプリルフール?何それ』とアイオロス。

「何やってんだサガ!」

怒りながらサガに詰め寄るも、当のサガ本人は何も悪ぶれることも無くさらりと一言。

「私はカノンに言われたとおりにしただけだ」

「サガがプロポーズを受けてくれたから、今日からは私の事は義兄さんと呼んでくれ」

そんな双子のやり取りを眺めていたアイオロスは、笑みを浮かべながらカノンに対して平然とした態度で爆弾発言を噛まし、カノンを挑発。


この二人の勝負は、四月馬鹿を逆手に取ったアイオロスの勝ちと相成った。

【完】

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ