☆矢文.
□節分
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「ムウさま、この豆炒めますか?」
貴鬼は机の上に置かれた大豆の山を見て、今晩のオカズなのかと尋ねたのだが、ムウはその質問にさらりと答える。
「いいえこれは投げるためのものです、まあ最終的には食べますがね」
先日、女神が日本の【節分】という伝統行事?を楽しそうに語っており、その話を聞いたムウはふとやってみたくなり【節分】に必要なものを揃えてみたのだった。
それが机一杯に置かれた大豆の山。
ムウの節分の説明を聞き終えた貴鬼は目を輝かせて『楽しそう』と。
その言葉にムウは、大豆山済み一杯にした箱を手渡すと一言。
「貴鬼いいですか、シオンがきたらこの豆を手加減なしに目一杯投げるのですよ」
「ムウよなぜ私が鬼役なのだ?」
何時から隠れていたのか、急に現れるシオンに対しムウははっきり言い放つ。
「最年長なんですから諦めて下さい」
ムウの言葉に反論するより先に、孫弟子の『オイラやってみたい』との可愛いお願いに、目尻を下げたシオンが鬼役をする羽目になるのはすぐ後の話。
孫弟子との豆まきを何だかんだで楽しんだシオンは、天秤宮へとやってきた。
夜半すぎ、遅くの訪問にもかかわらず笑顔で迎える童虎は、シオンが持っている袋を指差し尋ねる。
「それはなんじゃ?」
「ムウがくれたのだが…」
豆まきを楽しんだ後、天秤宮へと向かうシオンに対してムウが袋を手渡したらしいのだが、開けてみると中には大量の豆。
「二人で豆まきをしろということなのか?」
悩んでいる二人に対し、ムウが小宇宙で語り掛けてくる。
『シオン、老師【節分】の行事では最後に年の数だけ豆を食べるとその年は無病息災と言う事らしいので用意しました。ちゃんと食べて下さいね』
ムウの言葉にシオンは、成る程私達の事を考えているとは流石私の弟子、と心の奥で褒めるものの手渡された豆はずっしりと重たい。
『ムウよ、ちと多くないか私と童虎二人で食べても余るぞ』
『何言ってるのですか、ちゃんと261×2用意しましたよ』
『私は18…』
『身体年齢ではなく実年齢ですからね、残さないでくださいよ』
ムウの通達に苦笑いの二人だった。
【完】